年金や健康保険など、社会保険や税金で配偶者の扶養に入るべきか?外れるべきか?

厚生労働省のデータ によると日本での共働き世帯の比率は右肩上がりで上昇。男性雇用者世帯に占める共働き世帯の世帯数と比率は1989年の783万世帯・42.3%から2019年には1,245万世帯・66.2%へと20%以上も大幅に伸びています。一般的には、共働きをすることで世帯全体の合計収入額が増加しますが、一定の収入額をこえると扶養から外れなければならなくなります。その結果、世帯全体の手取り収入額は逆に減少する確率が高くなります。そのため、夫または妻の扶養に入るべきか、外れるべきかを正しく判断するための知識が必要です。そこで、正しい判断ができるために扶養の意味や、扶養に入るための条件、およびメリット・デメリットについて解説します。

第一章 そもそも扶養とは?

扶養とは一般的に、「親族を養い、生活を助けること」です。扶養される人は被扶養者と呼ばれ、「夫の被扶養者に妻がなる、ならない(夫の扶養に入る、扶養から外れる)」といった使い方をします。社会保険や税金における扶養とは、「親族からの経済的援助」を意味し、扶養者と被扶養者の双方に大きなメリットが生まれる制度です。

しかし、経済的援助を受けていれば、無条件に被扶養者となるわけではありません。被扶養者になるには収入が一定の金額以下であることが必要です。そのため、収入があるときに被扶養者であるメリットを失いたくなければ、年間の収入金額を一定の金額以下に抑えなければなりません。そうしないと、収入が増えても増えたメリットよりもデメリットが大きくなる心配があります。そのため、扶養に入る条件、外れる条件を理解しておくことは非常に重要です。

第二章 社会保険上と税法上の扶養とは?被扶養者となる対象者と収入の条件

扶養には「社会保険上の扶養」と「税法上の扶養」の2種類があります。社会保険と税法では被扶養者となる人の対象範囲と年間の収入額が異なるので注意が必要です。なお、社会保険や税金については改正がたびたび行われるため、最新の情報については、年金事務所や税務署で確認してください。本記事に記載されている情報は2021年2月現在です。また、記載されている内容については念のため最終判断をする前に年金事務所や税務署、および居住している自治体の担当窓口で確認してください。

1.社会保険上の扶養とは

社会保険上の扶養とは、被扶養者になることで保険料を支払わなくても扶養者の社会保険に加入できる制度のことです。社会保険には年金保険、健康(医療)保険、雇用保険、労働者災害補償保険(労災保険)、介護保険の5種類があります。このうちの、健康保険と年金保険で扶養の概念があるのは、被用者保険(会社員や公務員などの給与所得者が加入する健康保険のこと)と厚生年金保険の2つです。同じ年金保険と健康保険でも、主に自営業者が加入する国民年金保険と国民健康保険には扶養の概念がありません。そのため、収入がまったくない配偶者や子どもであっても被扶養者になれません。一方、被用者保険、厚生年金保険では一定の収入金額以下であれば被扶養者になり、保険料を支払わなくても夫または妻が支払う保険料で保険に加入できます。

1-1 社会保険上の被扶養者となる対象者

社会保険で被扶養者となるのは「後期高齢者医療制度の被保険者」などを除く以下の人です。

  1. 同居か非同居を問わず扶養者と生計を同一にする配偶者(内縁関係にある事実婚の配偶者を含む)と実子・孫・兄弟姉妹、および実の両親、養父母、祖父母、曾祖父母
  2. 扶養者と同居し、生計を同一にする上記(1)以外の3親等以内の親族(義父母など)、事実婚の相手の父母、および連れ子

1-2 被扶養者となる年間の収入限度額

  • 年間収入が130万円未満(被扶養者が60歳以上、またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)で、かつ以下の条件を満たすこと
  • 扶養者と同居している場合、収入が被扶養者の年間収入の2分の1未満であること
  • 扶養者と別居している場合、収入が被保険者からの援助額より少ないこと

ただし、130万円以下であっても、以下の条件を満たす場合、被扶養者とならずに保険料を支払って自分で社会保険に加入しなければなりません。その条件は以下の5つ のすべてを満たしたときです。

  1. 従業員数が501人以上の企業、または従業員数が500人以下であるが保険加入について労使の合意がある企業や自治体の属する事業所で働いて収入を得ている場合
  2. 会社が定める週の所定労働時間が20時間以上である場合(残業時間は所定労働時間に含まれない)
  3. 雇用契約書で1年以上継続して勤務する見込みがあると認められる場合
  4. 年収が106万円をこえる場合(ただし、1カ月の賃金には一部の手当や賞与などは含まれない)
  5. 学生ではないこと(ただし、卒業前に就職して引き続き雇用される予定の学生、休学中や夜間の大学に通学している学生などを除く)

なお、社会保険では税法上の扶養を判断するとき、収入に計上しなくてもいい以下の金額も計上しなければなりません。

  • 失業手当
  • 傷病手当金、出産手当金
  • 遺族基礎年金、遺族厚生年金
  • 障害基礎年金、障害厚生年金
  • 労働者災害補償保険(労災保険)の各種給付金

2.税法上の扶養とは

税法上の扶養とは、収入が一定の金額以下であれば、扶養者の収入から被扶養者の人数に応じて所定の金額を控除でき、所得税や住民税の負担が軽減される制度のことです。

2-1 税法上の被扶養者となる対象者

税法で被扶養者となるのは、扶養者と生計を同一にし、その年の12月31日現在において16歳以上で以下の条件を満たす人 です。

  • 扶養者の配偶者(内縁関係にある事実婚の配偶者を除く)、および6親等内の血族および3親等内の姻族
  • 都道府県知事から養育を委託された児童(里子)、市町村長から養護を委託された老人
  • 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと

2-2 被扶養者となる年間の収入限度額

  • 所得金額が48万円以下(収入が給与のみの場合は、給与の額面が103万円以下)であること

第三章 扶養に入るべきか?外れるべきか?メリット・デメリット

1.扶養に入るメリット

  • 社会保険料を負担しなくても厚生年金保険、被用者健康保険に加入できる(扶養者の社会保険料の増額もされない)
  • 扶養者の所得税・住民税の負担が軽減する

2.扶養に入るデメリット

  • 被扶養者の年金受給額が国民年金(基礎年金)のみになるため減少する
  • 被扶養者が妻の場合、出産手当金を受け取れない

3.扶養に入るべきか?外れるべきか?

一般的に正社員やフルタイムで働く派遣社員であれば、一定の金額以上の収入が得られるので被扶養者とならず、社会保険に加入し、保険料と税金を負担しなければなりません。そのため、扶養に入る、あるいは外れるかを検討する余地はありません。

扶養に入るか外れるかが問題になるのは、社会保険上、または税法上の被扶養者になるか、あるいはならないかのぎりぎりの年収になるパートやアルバイト、あるいはスポットで派遣社員として働く人です。その場合、年収によって税金や社会保険料が増えたり、扶養に入れなかったりします。そのため、その年収を知って、場合によっては年収をあえて抑えることを検討することが必要になります。

このような年収の限度額は一般的に「○○円の壁」と呼ばれています。そこで、扶養に入るかを判断する基準の年収限度額以外にも税金が課税されるようになる年収を含めて給与収入の金額で紹介します。

3-1 100万円の壁

給与収入が年間で100万円以下の場合、税金は一切かかりません。また、社会保険の被扶養者となるので社会保険料の負担も発生しません。しかし、原則として100万円をこえると100万円をこえた金額に対して住民税の所得割分が10%の税率で課税され、均等割分が一律に5,000円課税されます。

住民税は細かくは都道府県税と市区町村税に分かれ、それぞれについて所得に応じて課税される所得割と住民税を課税される人に一律に課税される均等割があります。なお、100万円以下であっても住民税の均等割分を一部の自治体が課税するため、詳しくは居住している自治体の窓口で確認してください。所得割分に関しては、すべての自治体が100万円をこえなければ課税されません。

3-2 103万円の壁

給与収入が年間で103万円以下の場合、収入に対する所得税は課税されません。また、社会保険の被扶養者となります。しかし、103万円をこえると、こえた金額に対して所得税が住民税に加えて課税されます。所得税の税率は年収に応じて、5%から最大45%まであります。

103万円の壁では注意点が1つあります。それは、「配偶者手当」や「家族手当」などの手当を支給する基準を一部の企業がこの金額以下と定めている可能性があることです。その場合、103万円をこえる収入があることが勤務先企業に伝わると、諸手当が支給されなくなるリスクが生じます。103万円をこえると思われる場合、事前に諸手当の支給基準の確認が必要です。

3-3 106万円の壁と130万円の壁

給与収入が年間で一定の条件を満たすことで106万円をこえた場合、およびその条件を満たさなくても130万円をこえると勤務先会社の社会保険に加入するため、被扶養者となりません。

一定の条件とは、以下の4つを満たした場合です。

  1. 従業員数が501人以上の企業、または従業員数が500人以下であるが保険加入について労使の合意がある企業に勤務(注)
  2. 所定労働時間として週20時間以上の勤務
  3. 雇用契約書で1年以上継続の勤務、または勤務する見込み
  4. 学生ではないこと
    (注)従業員数は、501人以上から2022年に101人以上、2024年からは51人以上へと徐々に減少し、対象企業の範囲が拡大 していきます。

106万円をこえて上記の4条件に当てはまる場合と、条件に関係なく130万円をこえると住民税、所得税に加えて社会保険料の負担が生じます。社会保険料の負担は厚生年金と健康保険以外にも、雇用保険、介護保険(40歳以上)の保険料の負担も生じます。ただし、労働者災害補償保険(労災保険)の保険料は勤務先企業が支払うため負担は発生しません。社会保険料と税金の負担金額は、年収やさまざまな条件によって変動しますが、おおよそ年収の約20%から25% です。さらに扶養から外れるため、扶養者の所得税・住民税も増加します。

このため、収入が106万円(または130万円)をこえると思われる場合は、その収入以下に抑えるか、あるいは超過させるかを慎重に検討する必要があります。そうしないと、社会保険料と税金の負担で手取り収入が大幅に少なくなり、さらに扶養者の税金も増加するため、世帯全体の手取り収入が大きく減少します。ただし、社会保険料の負担額は増えても、将来の年金の受取額が増えるなどのメリットがあるため、支払った保険料の全額が無駄になるわけではありません。

なお、勤務先企業で社会保険に加入できない場合がありますが、そのときは、国民年金、国民健康保険に加入しなければなりません。扶養者の年収が260万円未満の場合、扶養に入るには扶養者の収入の半分未満という条件があるため、130万円未満でも扶養から外れることがあるので注意が必要です。

3-4 150万円から201.6万円の壁

配偶者の給与収入が年間で150万円以下の場合は、扶養者の所得から38万円の配偶者特別控除が適用されて所得税を軽減できます。150万円から201.6万円までは、控除額が38万円から徐々に引き下げられ、201.6万円をこえると控除は適用されません。この控除は、扶養者の所得によっても変わります。

  • 900万円以下(給与収入の場合1,095万円以下)の場合、控除額は38万円
  • 900万円をこえ950万円以下(同1,095万円以上1,145万円以下)の場合、控除額は26万円
  • 950万円をこえ1,000万円以下(同1,145万円以上1,195万円以下)の場合、控除額は13万円
  • 1,000万円をこえる(同1,195万円をこえる)場合、控除は受けられません。

第四章 まとめ

年間の収入が一定金額をこえると、社会保険に入らなければなりません。その基準になる収入金額はバラバラで「○○円の壁」と一般的に呼ばれています。この収入金額の壁を理解しないと、手取り額が収入に対して大きく減少することがあります。しっかり理解して、年収の金額に応じて、そのまま扶養に入るべきか、あるいは収入を増やして扶養を外れるか、あるいは手取り額が減る税金を支払わなくても済むようにするかの判断を正しく行ってください。

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