FPが教える「賃貸VS.住宅購入」判断のポイント
人生のなかでも特に大きな金額が必要となる三大資金の一つが住宅資金です。住宅資金を工面しながら、賃貸で生活するのか、あるいは、一生安心して住める家を購入するのか、また、どのタイミングで動き出すべきか悩まれる方も多いでしょう。今回は、賃貸か住宅購入かで迷ったときに見るべきポイントを、プロの視点からいくつかお教えいたします。
賃貸がお勧めの人①社宅に住んでいる人
賃貸をお勧めできるケースの一番目は、社宅に住む方です。社宅なら、エリア家賃相場の半額以下や、月々2~3万円のコストだけで住めるなど、かなり少ない負担で住める場合があります。上場企業では、社宅制度や家賃補助制度が充実していることも多いです。家賃相場の半額以下で家を借りて住めている方は、できるだけそこに長く住むほうが、キャッシュフローは明らかによくなります。
では、現在社宅住まいの方が「今後自分は家を買えるのか」が気になったときにできる、簡単なチェック方法があります。
例えば、現在、相場の賃料が10万円の家に3万円の負担で住んでいるとします。そのとき、相場家賃10万円と実際に払っている家賃3万円との差額である7万円の貯金が毎月できる状況を作れていないのであれば、家を買うのは危ないかもしれません。相場との差額7万円は、実際は会社が負担していて、その分お給料が多いのと一緒です。浮いた分をきちんと貯めていける家計を目指すことが大事です。
そのうえで、家賃補助がなくなるタイミングに住宅取得を考えるのが、キャッシュフロー的に住居費の負担が一番抑えられるパターンです。負担の軽い賃貸時代にしっかりと貯金をして、充分な住宅資金を準備のうえで家を買う、というのはとてもよい選択肢だと思います。
賃貸がお勧めの人②10年以内に家族構成や暮らしの変化が予見される人
家族の状況によっては賃貸の気楽さをうまく利用し、いつでも住み替えができる状態にしておくほうがよい場合があります。その目安は、「これから10年以上、今の住まいでの暮らしが変わらないかどうか」です。変わらないのであれば、ずっと家賃を払うより家を購入されるほうが経済的にお得になることが多いです。
さらに、住宅購入時に住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険に加入するため、保障の見直しで、家計費を減らせることもあります。
一方、10年以内に、
- 子どもが社会人になっていなくなる、一人暮らしができなくなった親を引き取って同居するなど、家族の人数が変わる
- 部屋がもう一つ必要になる、あるいは、誰かがいなくなって部屋数が余る
- 転勤があり、違うところで暮らす可能性が高い
というような方は、賃貸のほうが、機動的に住み替えることができます。暮らしの変化がある都度、賃貸で必要な住まいを選ぶほうが経済的に合理的なことがあります。
ケース①家族構成の変化と住まい選びの注意点
実際のケースをご紹介します。
ご夫婦とお子様3人の5人家族で4LDKに住みたいと家を探されている方がいました。お話を聞くと、お子様はみなすでに社会人や大学生になっていました。この場合、10年後にはお子様全員が家を出ている可能性があります。4LDKの家にご夫婦だけで住まうことになり、それに対してたくさんのローンを払うお金が必要になるというのは、本当によいことなのでしょうか。
二世帯住宅として、お子様やお孫さんも一緒に住むというのでしたら価値はありますが、お子様家族が転勤してしまうなど、そううまくいかなくなることもあります。10年以上今の人数で幸せに住み続けることができるのかを考えて住宅を選択していくと住居費の無駄が減らせますね。
ケース②エリアを見直して住宅を購入
もう一つ最近あった事例です。
郊外にあるご実家近くに家を買うべきか、少し無理してでも都内に買うべきかで迷われていたご夫婦がいました。お子様が小さいため、ご実家の近くであれば、何かしら面倒を見てもらえるし、祖父母とお孫さんも仲良く過ごせます。また、都内に比べて家のコストも抑えられる、ということでそちらに傾きかけておられました。
しかし、5年後、10年後、20年後、ご夫妻やお子様はどういう生活をして、都内と郊外どちらの生活がよいかライフプランを考えてみると、奥様はお子様が小学生になるころ職場復帰される予定だと分かりました。港区にある職場に復帰される予定だと分かりました。また、お子様をいずれ塾に通わせ、都内の私立中学に受験させたいと考えていらっしゃることも分かりました。
ご夫婦は、やはり都内のほうがよさそうだということで、都内での家探しにシフトされ、何十件も見て回られた末に、納得の物件を購入されました。その後、奥様が会社から請われて予想外に早く職場復帰されることになりました。「あのまま郊外の住まいを選んでいたら、職場復帰は難しかった。思い切って都内で探して正解でした。」と、本当に喜んでいただけました。
まとめ ライフプランから最適な住宅を選ぼう
30年後の生活はどうなっているのかと言われると、遠すぎてイメージがわかない方も多いかもしれません。けれどこの先10年間で、自分や家族の暮らしがどう変わるだろうかと考えることは比較的容易であると思います。
そのときに、今の場所、今の広さでずっと住み続けたいということであれば、住宅購入に踏み切られても満足な暮らしが続けられると思います。
しかし、数年以内に引っ越すかもしれないという状況や、自分や配偶者の働き方が変わるかもしれない、お子様の通う学校や塾の場所が変わるかもしれないということであれば、そこを含めたうえでの家のあり方を考えることが大事です。
筆者プロフィール | |
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家計の窓口 代表 ファイナンシャル・プランナー ゆりもと ひろみ |
大阪出身。1995年神戸大学理学部地球科学科卒業。 出産を機にマネープランの必要性を痛感し、FP(ファイナンシャル・プランナー)となる。 一男一女の子育てをしながら、開業以来1,200件以上のFP相談を受ける。 資産運用・家計管理・住宅購入・保険見直しなど幅広いマネー相談に精通し、働くママとして奮闘する経験を生かした、親身なアドバイスが好評。 2013年、FP開業10周年を節目に、日本初の本格的女性FP養成機関株式会社FPフローリストを設立。 後進の育成と良質のFPサービスの普及に尽力している。 |
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