介護保険と健康保険(医療保険)の違いは?

40歳になるとすべての国民が加入しなければならない公的保険に介護保険があります。高齢化社会を迎え、誰もが利用することになる可能性のある介護保険について、いつから、どのように利用できるのか、介護保険と健康保険との違いや併用の可否など介護保険を正しく理解し、有効に使うために必要な知識について紹介します。

なお、ここでの解説には健康保険の対象にならない差額ベッド代や、先進医療を受けたときの医療費などの費用負担を軽減するために加入する民間保険会社の医療保険、および介護に関する費用の負担軽減を目的として加入する民間の保険会社の介護保険は除きます。

※本記事に記載の金額や制度の内容は2021年2月現在です。

第一章 介護保険、健康保険(医療保険)とはどのようなもの?

1.介護保険とは?

介護保険は40歳になると加入しなければならない保険です。介護が必要になったとき介護にかかわる費用を所得に応じて1割から3割を負担することで介護サービスを利用できます。ただし、利用するには要介護認定の審査を受け、認定されなければなりません。認定審査は、市区町村の担当者が自宅を訪問して調査を行います。そのとき、かかりつけ医に意見書を作成してもらう必要があります。認定審査の結果、介護が必要と認められると、必要な介護の程度に応じて「要支援1〜2」または「要介護1〜5」の7段階のいずれかに認定されます。その後、担当ケアマネージャーによるケアプラン(介護プラン)が作成され、介護サービスが利用できます。要介護・要支援認定は、原則として12カ月ごとに見直しされ、有効期間満了の前に更新の手続きが必要です。

2.健康保険(医療保険)とは?

健康保険は出生後に速やかに加入しなければならない保険です。疾病や負傷の治療で発生する医療費を、年齢と所得に応じて1割から3割を負担することで医療サービスが受けられ、また傷病による休業や死亡時、あるいは出産時にさまざまな給付金が支給される保険です。健康保険は大きく分けると以下の3種類があり、いずれかに必ず加入しなければなりません。

(1)被用者健康保険
主に民間企業に勤務する会社員・国や地方自治体に勤務する公務員などの給与所得者とその家族が加入する被用者健康保険

(2)国民健康保険
主に自営業者や非正規雇用者とその家族が加入する国民健康保険

(3)後期高齢者
75歳以上(寝たきりなどの場合は65歳)になると加入する後期高齢者医療制度

第二章 介護保険と健康保険(医療保険)の違いは?

介護保険と健康保険の違いについて「保険の目的」「利用条件」「利用できるサービス」「利用限度額」の4つの面から紹介します。

保険の目的

介護保険 健康保険
加齢による心身の変化によって生じる疾病や負傷または体の機能の衰えにより自立した生活が困難になり、何らかの介護を要する状態となったとき、それぞれの要介護状態に応じて、人間らしい尊厳をもった日常生活を営めるように支援すること。

平均寿命の伸び、少子高齢化・核家族化、地域共同体の崩壊などで、高齢者の増加や高齢者の生活を支援する家族の減少による独居高齢者の増加問題に対応すること。

業務上の災害以外による疾病、負傷、死亡、および出産の費用の一部について給付を行い国民の生活の安定と福祉の向上を目指すこと。ただし、労働者災害補償保険(労災保険)に加入する労働者の業務上の疾病や負傷については労災保険の対象となって健康保険の適用外です。

 

 

 利用条件

介護保険 健康保険
満40歳を過ぎると加入しなければならない保険で、原則として65歳以上で介護が必要であると認められると利用できます。40歳から65歳未満は、厚生労働省が定めた16種類の特定疾病にかかって、介護が必要なときに利用できます。

65歳以上は第1号被保険者、40歳から65歳未満は第2号被保険者に区分されます。

16種類の特定疾病とは、「回復の見込みがないと医師が判断したがん」「関節リウマチ」「筋萎縮性側索硬化症」「骨折を伴う骨そしょう症」「初老期における認知症」などです。特定疾病に関する定義やすべての疾病の名称については厚生労働省のホームページで確認してください。

健康保険は、原則として要介護の認定を受けていない人、75歳未満の人が疾病や負傷によって医療サービスを受ける必要があるときに無条件で利用できます。75歳以上は後期高齢者医療制度に加入することで医療サービスを利用できます。

 

 

 

 

 

利用できるサービス

介護保険 健康保険
要介護1から5の認定を受けた人が利用できる「介護給付」と要支援1、2の認定を受けた人が利用できる「予防給付」に大きく分かれます。

さらに、「介護給付」には、「居宅サービス」「施設サービス」「居宅介護支援」「地域密着型サービス」があり、「予防給付」には、「介護予防サービス」「地域密着型介護予防サービス」「介護予防支援」があります。

それぞれで利用できるサービスの詳細は、厚生労働省の「公表されている介護サービスについて」のページで確認できます。

「医療給付」と「現金給付」に大きく分かれます。

「医療給付」には、疾病や負傷で治療を受けたときの医療費、訪問看護療養費、入院時食事療養費、入院時生活療養費(65歳以上)などの給付があります。これらによって1割から3割の費用負担で医療サービスを受けられます。

「現金給付」には、出産手当金、出産育児一時金、傷病手当金、高額療養費、埋葬料などがあり、一定の要件を満たすことで現金が給付されます。

 

利用限度額の有無

介護保険 健康保険
介護保険は介護費用に対する費用負担は1割から3割で利用できますが、その費用負担で利用できる介護費用には限度があります。

限度額は、介護認定の認定区分である要支援1、または2、および要介護1から5の7段階の区分別に決められており、1カ月あたりの利用限度基準額は以下のとおりです。

要支援1

5万,320円

要支援2 10万5,310円
要介護1 16万7,650円
要介護2 19万7,050円
要介護3 27万0,480円
要介護4 30万9,380円
要介護5 36万2,170円

介護認定度が重くなるほど介護サービスを多く受けられます。介護サービスは給付限度基準額をこえても利用ができますが、その場合はこえた金額の全額を自己負担しなければなりません。

なお、介護サービスだけではなく特定の福祉用具の購入費や介護に適するように住宅を改修する費用は、上記の限度基準額とは別に要介護度にかかわらず、それぞれ上限額が決められています。特定福祉用具購入費の支給限度基準額は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で10万円、居宅介護住宅改修費は原則として1人につき生涯で20万円です。

介護保険とは異なり限度額はありません。

高額な医療費がかかると1割から3割の負担でも大きな金額になります。その場合、一定の金額をこえると「高額療養費制度」が利用できます。「高額療養費制度」とは、毎月1日から末日までの間に支払った医療費が一定の金額(自己負担限度額)をこえると、申請することでその金額をこえた分が払い戻される制度です。自己負担限度額は所得に応じて設定されています。詳しくは厚生労働省の「高額療養費制度について」のページを見てください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三章 訪問介護を受ける場合に利用できるのは介護保険、医療保険のどっち?

主に介護保険は介護が必要になったとき、健康保険は疾病や負傷の治療が必要なときに利用する保険です。このケースでは利用すべき保険は簡単に分かりますが、例えばリハビリはどうでしょうか。また、介護サービスを受けているときに疾病や負傷で医療サービスを受けなければならなくなったとすると、介護保険、または健康保険のどちらを利用すべきでしょうか、それとも2つの保険の併用は可能でしょうか? 介護施設や医療機関では介護保険と健康保険の使い分けは簡単ですが、居宅で訪問介護を受けている場合は分かりにくいので、サービス別に利用する保険を紹介し、どのように使い分けるのかについて解説します。

1.サービス別に利用できる保険

主に居宅で受けるサービスには以下があります。そのときに利用する介護保険は、原則として要介護認定を受けていなければ利用できません。また、医療行為を受けるときは原則として介護保険は利用できず健康保険を利用します。

1-1 訪問介護

訪問介護は、ヘルパーが自宅に来て食事、排泄(はいせつ)、洗濯、買い物の付き添いなど日常生活での世話や支援(介護)を行うサービスです。医療行為は禁止されていますが、一定の要件を満たすヘルパーであれば、たんの吸引や経管栄養の処置など一部の医療行為を依頼できます。医療行為は一部を除いて行わないので介護保険を利用します。

1-2 訪問看護

訪問看護は、看護師やリハビリのための理学療法士などが自宅を訪問して医療的なケアを行うサービスです。介護保険の対象になる場合と、健康保険の対象となる場合があります。利用するとき、適用されるのが介護保険と医療保険のどちらを使うかによって、1回の利用時間や利用回数に制限があります。

1-3 訪問診療(往診)

訪問診療は、医師が自宅を訪問して診療や治療、薬の処方、療養相談、健康相談などの医療行為を提供するサービスです。医療行為のため健康保険を利用します。

1-4 居宅療養管理指導

居宅療養管理指導は、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などが自宅に来て、健康管理の指導やアドバイスを行うサービスです。医師が来ても医療行為は行わないため介護保険を利用します。

2.両方の保険が利用できる訪問看護での保険の使い分け

訪問介護で利用できるサービスのなかで、訪問看護サービスは両方の保険が利用できます。この場合、介護保険、健康保険の両方に加入していると、どのように使い分けるのでしょうか?

介護保険と健康保険は原則として併用はできないため、訪問介護の利用者が要介護認定を受けていれば介護保険を優先して利用し、認定を受けていない、または介護保険に加入していない場合は健康保険を利用します。介護保険に加入していても要介護認定を受けていなければ医療保険を利用します。

3.例外として介護保険と医療保険を併用できるケース

要介護認定を受けていれば、原則として介護保険を利用しなければなりません、しかし、例外として以下に該当する場合は健康保険が適用されます。

  • 末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症など「特掲診療料の施設基準等別表第7号に掲げられている疾病等者
  • 呼吸器疾患の急激な悪化である急性増悪や退院直後などで訪問看護が必要と医師によって「特別訪問看護指示書」が交付された人
  • 精神科の医師によって「精神科訪問看護指示書が交付された者」

そのため、健康保険を利用しながら同時に介護保険も利用した訪問看護による介護サービスを受けることが可能です。それ以外にも、例えば介護保険のリハビリを受けているとき、別の疾病で新たに医療保険でのリハビリが必要になった場合も併用できます。

第四章 まとめ

高齢化の進展で要介護認定を受ける人の数も増加しています。高齢になれば加入することになる介護保険と健康保険の違いなどについて解説しました。正しい介護保険の知識を身につけて介護保険と健康保険を使い分けて利用してください。また、健康保険だけでは十分にカバーできない老後の疾病や負傷のリスクに備えて家計に負担の少ないお手頃な掛け金から始められる全国共済への加入をおすすめします。

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