大きな被害をもたらす気象現象の1つでよく耳にする『線状降水帯』とは?

『線状降水帯』による集中豪雨は梅雨から台風の季節にかけて多く発生しています。その発生頻度は気象庁の分析によると、この45年間で2倍余りに増加。梅雨や台風の季節である夏季に限定すると4倍近くに増加しています。『線状降水帯』という用語が知られるようになったのは、まだ新しく2014年頃からです。しかし、かなり以前から集中豪雨が起きたとき、線状の降水域ができていることが研究により明らかになっています。『線状降水帯』による集中豪雨は、土砂崩れや河川の氾濫による浸水などで多数の死者や家屋への被害をもたらします。そこで、夏季に多い『線状降水帯』の定義や発生メカニズム、および『線状降水帯』の予報が出たときの注意点について解説します。

第一章 『線状降水帯』とは?ゲリラ豪雨との違いは?

1. 『線状降水帯』の特徴

『線状降水帯』とは、数時間にわたってほぼ同じ場所に次から次に列を作るように発生・発達し、激しい雨を降らす線状に連なった積乱雲(雨雲)群のことです。『線状降水帯』の範囲は、長さが50~300km程度、幅が20~50km程度で、積乱雲の高さは約7kmと極めて低いのが特徴です。発生件数が増加している主な理由は、地球温暖化の影響で海からの水蒸気量が増えたことで積乱雲が連なって次々に発生し、発達しやすくなったためです。

2.ゲリラ豪雨と『線状降水帯』との違い

ゲリラ豪雨とは、局地的に急に発生し、短時間に(長くても1時間程度)激しく降る雨のことです。 線状降水帯と違いゲリラ豪雨による雨の範囲は狭く、突発的かつ散発的に起こるため、事前に予測することは現時点では難しいとされています。ゲリラ豪雨も夏季によく生じますが、その理由は夏の太陽の強い光によって地表付近の空気が暖められて上昇気流が発生しやすくなるからです。上昇気流が強いと積乱雲が発生・発達し、局地的に短時間で強い雨を降らせます。都市部におけるヒートアイランド現象は、ゲリラ豪雨が発生しやすくなるといわれています。

第二章 『線状降水帯』の発生メカニズムと起きやすい地域の特徴

1.『線状降水帯』の発生メカニズム

『線状降水帯』は、以下の発生メカニズムによって起きると考えられていますが、まだ解明されていないことも多く、今後も継続的な研究が必要とされています。

  • (1)大量の暖かく湿った空気が低層近くを中心に継続して流入する。
  • (2)局地的な前線や地形などの影響で暖かく湿った空気の上昇気流が発生する。
  • (3)このときの大気の状態は不安定で積乱雲が発達する。
  • (4)上空の風などの影響でほぼ同じ地域に積乱雲群が次から次に発生して線状に並び、その結果、強い雨が長く降る。

『線状降水帯』が生まれる現象の1つに「バックビルディング(後方形成)型」があります。「バックビルディング型」とは、積乱雲が風上で連続して発生し、風下では雨が激しく降り続ける現象です。風下から見て後方に積乱雲が林立するビルのように並んで見えることから、この名称が付けられました。通常の積乱雲の場合、狭い範囲に1時間当たり20mm程度の雨を降らせて消滅します。しかし、バックビルディング型現象が起きると、積乱雲が発生し、激しい雨を降らせながら上空の風に流されてゆっくりと移動します。そして風上に発生した積乱雲の場所には新たに積乱雲が発生し、また風下へ移動します。こうして、次々と積乱雲が発生し、1時間に100mm前後の猛烈な雨を比較的広範囲に降らせ続けます。なお、地上の風向きと上空の風向きの組み合わせによって、「バックビルディング型」以外に「スコールライン型」と「バックアンドサイドビルディング型」があります。

『線状降水帯』の消滅には、「積乱雲を発達させる水蒸気の供給と上昇気流を引き起こす要因の解消」、または「積乱雲を移動させる上空で吹く風の流れの変化や消滅」が起きる必要があります。どちらかが起きない限り、激しい雨が続きます。 2020年熊本県に生じた『令和2年7月豪雨』での『線状降水帯』は10時間前後停滞し、球磨郡あさぎり町では24時間の雨量で463.5mmを記録。球磨川が氾濫し、浸水の深さは人吉市街地で3~5mに達するなどの大きな水害をもたらしました。

2.『線状降水帯』が起きやすい地域の特徴

気象庁の集中豪雨事例のデータによると『線状降水帯』は日本を大きく4つの地域にわけて、南日本(約36%)、西日本(約27%)、東日本(約23%)、北日本(約15%)の順に多く起きています。また、集中豪雨が起きた事例の内、線状降水帯が起きていたのは南日本では約90%、西日本では約75%です。一方、北日本や東日本では50%以下です。

(注)
南日本:主に九州地方
西日本:主に中国・四国地方と近畿地方の西部
東日本:主に近畿地方の東部から東海・中部・関東地方
北日本:主に北海道・東北地方

上記は1995年~2009年までの台風を除く集中豪雨の261事例を地域別に分類したデータです。『線状降水帯』は、南・西日本で比較的多く発生していますが、日本のどの地域に住んでいても起きると思って十分に注意することが必要です。過去、何十年も河川の氾濫や土砂崩れなどの豪雨による災害がなかった地域でも、今後は『線状降水帯』による大きな被害がでる可能性があり、油断しないようにしなければなりません。

第三章 『線状降水帯』で気を付けるべきこと

激しい雨が降り続いたり、『線状降水帯』の発生の発表や予報が出されたりしたら、気象情報や災害発生の危険度情報を確認しましょう。

(1)気象情報の確認

気象庁のホームページなどで雨雲の動きや雨量などの情報を確認します。

(2)気象庁の「キキクル(危険度分布)」のページで浸水・土砂・洪水の危険度を確認

危険が予測される場合、気象庁のホームページで住んでいる地域の浸水・土砂崩れ・洪水の危険度を確認します。危険度は地域別に5段階に色分けして表示されています。高齢者や病人・乳児などがいたり、居住している場所が孤立していたりして避難に時間がかかる場合、およびハザードマップで災害リスクの高い場所に住んでいるときは、赤色(警戒レベル3)での避難が必要です。それ以外の場合は、レベル4(紫色)で避難します。

なお、『線状降水帯』が発生する条件やメカニズムは研究が続けられており、現時点で発生を正確に予測することはできていません。 そのため的中率は4回に1回程度にとどまっていますが、『線状降水帯』の予報がでれば、その後数時間にわたって大雨・豪雨になる可能性があります。安全のために 情報を注視し、危険を感じたときは速やかに避難するようにしましょう。

避難所への移動が困難な場合は、近くにある頑丈な建物の高層階へ避難します。徒歩で避難するとき、すでに水があふれているときは側溝やマンホールのフタが開いていないかなどに注意して、できるだけ明るい時間帯に2人以上で避難しましょう。避難指示などが出ていなくても、近くで『線状降水帯』が観測されたと発表があったら、避難場所や避難経路を確認し、危険な場所には近づかないようにしましょう。

キキクル(危険度分布)

第四章 まとめ

『線状降水帯』による災害は、過去何十年にもわたって 被害のない地域でも起きる可能性があります。自然災害の猛威は予想をはるかにこえ、日本全国どこでも起きる可能性があります。そのため、風水雪害を始めとした自然災害への備えとして、幅広く保障が受けられる全国共済の「新型火災共済」 への加入をおすすめします。 火災や風水雪害だけでなく、地震や落雷など、さまざまなリスクに対応しています。


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