認知症になるとどれぐらい費用が掛かるのか?超高齢化社会への備え

厚生労働省と筑波大学による2013年の調査資料によると、全国の65歳以上の高齢者に占める認知症の有病率は15%、患者数は約439万人(2010年)と推計されています。また、認知症予備軍は、推定値は13%、人数は約380万人(2010年)と推計されています。高齢化はますます進展していることから、2017年度の高齢社会白書では、認知症患者数は推定で約460万人(7人に1人の15%)ですが、内閣府によると 2025年には約700万人(5人に1人の20%)が認知症になると報告しています。

認知症は介護に重い負担がかかることから、本人のみならず家族にとっても気になる病気です。現在の医療で完治が見込めないため、長い期間の医療費、介護費用がかかります。そこで、認知症の種類や症状とともに、認知症になったときの医療費、介護費がいくらぐらい必要かについて紹介します。また、認知症は早期発見・早期治療と予防が重要なことについても紹介します。

第一章 そもそも認知症とは?

認知症の種類や症状について紹介します。

1.認知症の種類

一言で認知症と呼ばれますが、認知症とは総称で多くの種類があります。認知症の全体約85%を「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「血管性認知症」が占めます。この3つの認知症について簡単に紹介し、残りの15%に含まれる認知症についても名称を紹介します。

1-1 アルツハイマー型認知症

認知症のなかで最も多く全体の約50%がアルツハイマー型認知症です。原因は、ベータタンパク(アミロイドベータ)やタウタンパクと呼ばれる異常なタンパク質が脳に蓄積していくことで神経細胞が死んでいき、脳内の海馬と呼ばれる部分から萎縮していくことで発症します。萎縮は徐々に脳全体に拡大していきます。初期の症状は、新しく経験したことを記憶できずにすぐに忘れるほか、日付・昼夜・今の場所、家族の顔などが分からなくなる、判断力や理解力が低下して簡単な計算や調理が出来なくなります。また、無関心、妄想、徘徊(はいかい)、抑うつ、興奮、暴力などが現れることもあります。

1-2 レビー小体型認知症

レビー小体型認知症とは、全体の約20%を占めます。原因は、レビー小体という異常なタンパク質ができ、神経細胞が破壊されることで発症します。この認知症は、明確に脳内での変化が見られないことから、レントゲンなどで脳内の異常を見つけにくいという特徴があります。症状としては、実際にはいない人が見えるという幻覚、妄想、うつ状態、あるいは手足が震える、小刻みに歩くなどパーキンソン症候群の症状、および寝ているときに怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常な行動が現れます。症状は、安定している時期と不安定な時期を繰り返しながら、徐々に症状が深刻になっていく特徴があります。

1-3 血管性認知症

血管性認知症は、全体の約15%を占めます。原因は、脳梗塞(こうそく)や脳内出血などで脳内での血流の循環が悪くなり、脳細胞の一部がダメージを受けて壊死してしまうことで発症します。脳のダメージを受けた場所やその程度によって症状が異なります。手足のマヒやしびれ、記憶障害や感情のコントロールが困難になるなどの症状が現れます。症状は、急激に現れて、それ以降は段階的に、あるいはまだらに進んでいくという傾向があります。

1-4 その他の認知症

  • 前頭側頭型認知症(ピック病)

脳のなかの前頭葉と側頭葉と呼ばれる部分が委縮することで発症します。症状の特徴として、今までなかった人格が現れて他人に配慮しなくなる、周りの状況にかかわらず自分が思った通り行動してしまうなど別の人格に変わる、あるいは反社会的行動(万引き、無銭飲食など)が現れます。認知症の特徴の記憶障害は症状としてはあまり目立ちません。そのため、認知症と疑われずに単に性格が変わっただけと思われて早期発見が遅れる認知症です。ピック病とも呼ばれます。

  • 正常圧水頭症

正常圧水頭症とは、認知症の障害を起こす原因となる病気のことで、脳を保護する脳脊髄液が過剰にたまるために起こります。脳脊髄液は、脳の中央にある脳室と呼ばれる場所で毎日一定量がつくられ、脳と脊髄の周りを流れて静脈などに吸収されていきます。しかし、何らかの原因で、この流れが滞ることで脳室が大きくなって周りの脳が圧迫されて認知症の症状が起こる病気です。認知症の症状のほか、歩行障害や尿失禁などの症状が現れます。手術による治療で改善が期待できます。

  • アルコール性認知症

アルコール性認知症とは、アルコールの多量摂取が原因で起こると考えられる認知症のことです。他の認知症は、進行性のため現状では認知症治療で回復させられませんが、アルコール依存による認知症は、長期間の断酒によって認知機能が改善することがあります。症状は、記憶障害、見当識障害などです。

2.認知症の症状

認知症は、脳の病気で高齢になるほど発症しやすく症状として記憶障害や徘徊などが現れることは多くの人が理解しています。しかし、症状について、そのほかにどのような症状が出るかまではあまりよく知られていません。そこで、症状について詳しく紹介します。症状には大きく分けて、脳の細胞が壊れることによって起こる「中核症状」と、認知症の発症によって、患者の性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って起こる「周辺症状」の2つがあります。中核症状は、誰にでも起こり得る症状で、周辺症状は患者によっては現れない症状です。

2-1 中核症状

厚生労働省は以下の5つの症状 に分けています。

2-1-1 記憶障害

日常的な行動で見聞きしたこと、勉強して覚えた情報などは、脳の「海馬」と呼ばれる部分に、一時的に記憶されます。その後、重要な記憶や何度も覚えた情報は、脳の「大脳皮質」と呼ばれる部分に記憶されるといわれています。「大脳皮質」に記憶された情報は、長期間にわたって保存され必要なときにいつでも取り出して思い出せます。老化によって、徐々に「海馬」による一時記憶や、そのなかの重要な情報を「大脳皮質」に長期保存する能力も衰えて、物覚えが悪くなっていきます。この場合の記憶が悪くなるのは認知症ではないので心配する必要はありません。しかし、認知症になると、「海馬」そのものが病的に機能しなくなるので一時的な記憶が難しくなります。「大脳皮質」にある記憶は、まだ最初の段階は思い出せますが、認知症の進行で「大脳皮質」も機能しなくなり、覚えていたはずの記憶も失われていきます。そのため、例えば財布を一時的に置いた場所を忘れ、盗まれたと勘違いしたり、食事をしたことを忘れ、食事を食べさせてもらえないと文句をいったりします。また、退職しているのに仕事に行っていた記憶があるので出勤しようとすることもあります。

2-1-2 見当識障害

見当識とは、現在の年月日、曜日、季節、時刻、自分の年齢や、どこにいるかなどの基本的な状況のことで、見当識障害とは、その状況が分からなくなることです。認知症になると記憶障害と並んで早くから現れます。どういう状況にいるか分からないので、長い時間を待つことや、準備があっても予定の時間に終わらせられないなどの症状が起こります。また、時間感覚だけでなく「何回も今日は何日かと質問する」「季節感のない服を着る」「自分の年が分からない」なども起こります。さらに進行すると近くに外出するだけでも迷子になったり、自宅のトイレの場所が分からなくなったりします。もっと進行すると、自分の年齢や人の生死に関する記憶がなくなり、80歳の高齢者が、自分の子どもに対して兄さん・姉さんと呼んだり、亡くなった家族も生きていると誤解したりします。

2-1-3 理解・判断力の障害

具体的な障害としては以下のような例があります。

  • 考えるスピードが遅くなる
  • 自販機、銀行のATM、自動改札、全自動洗濯機などを使用するときに戸惑う
  • 2つ以上のことを同時に行えなくなる
  • ちょっとした変化にもかかわらず混乱する
  • 観念的な理解を現実の行動として結び付けられなくなる
    (例えば糖尿病でたくさんの甘いものを食べてはいけないと理解していても、目の前に甘いお菓子があると食べてしまうなど)

2-1-4 実行機能障害

実行機能障害とは、計画を立てて順序よく行動したり、いろいろなことを手配したりすることが困難になる障害です。ひどくなると自立した生活が送れなくなります。

2-1-5 感情表現の変化(障害)

認知症による記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害などから、認知症患者は周囲からの刺激や情報に対して正しい解釈ができずに、一般の人の反応とはまったく異なる予測が不可能な反応を示すことがあります。何気ない言葉や態度に反応して、普通の人であれば何の反応も示さないことに対して怒ったり、泣いたり、わめいたりすることがあります。

上記の5つの障害とは別に、厚生労働省は認知症の症状として「抽象思考の障害」「判断の障害」「失行」「失認」「失語」を上げています。5つの障害で触れられていない「失行」「失認」「失語」の障害 について紹介します。

  • 失行障害

失行障害とは、体を動かせるにもかかわらず、服をきちんと着られない 、食事のときにお箸を上手に使えないなどの障害のことです。

  • 失認障害

失認障害とは、目・耳・鼻など五感の器官に医学的な異常がないにもかかわらず、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感に関する認知能力が正常に働かなくなる障害のことです。遠近感がなくなる 、触られても何で触られているか分からないなどです。

  • 失語障害

脳の言語に関わる部位が損傷することで「聞く・話す・読む・書く」といった音声・文字などの言語情報に関する機能が失われる障害のことです。話せる言葉の数が少なくなる、読めても文章の意味が理解できていないなどの症状が起きます。

2-2 周辺症状

中核症状は、認知症の本質的な症状ですが、本人がもともと持っている気質や、生活環境、人間関係など、さまざまな要因がからみ合って生じる以下の症状は、必ずしも認知障害といえないので周辺症状と呼ばれています。周辺症状は「BPSD」とも呼ばれます。中核症状は、誰にでも起こり、病気の進行とともに徐々に強くなっていきます。一方、周辺症状は、必ずしも症状が出るとは限らず、またいままでの生活環境や家族の接し方で、症状の程度が変わります。

  • 周辺症状の具体例:妄想、幻覚、多弁、過食、徘徊、不安、焦燥、不潔、暴力など

第二章 認知症の治療にはどれぐらいの費用が掛かるのか?

慶応大学 が2015年に調査結果をまとめ、厚生労働省に提出した「認知症の社会的費用を推計」によると、認知症に掛かる医療費は以下のとおりです。

1 人あたりの入院医療費は約34万円/月、外来医療費が約4万円/月です。この金額は、医療費総額のため、実際の自己負担額はこの金額の1割から3割です。仮に負担率を2割、入院が1回、通院治療の期間を10年とすると、約103万円です(=34万円×0.2+4万円×0.2×12カ月×10年)。なお、注意点として医療費には認知症患者が別の病気で治療を受けた費用などが明確に分離されていませんので誤差が含まれます。

認知症の場合、医療費としては検査費用と薬代が掛かります。主に行われる検査の種類と認知症治療に使用される薬の名称とおよその費用を紹介します。

1.検査の種類(名称)

  • 認知機能テスト(知的機能や認知機能を把握する検査)
  • CT検査(X線で脳の状態を把握する検査)
  • MRI検査(X線とは異なり磁気の共鳴によって脳の状態をCT検査よりも詳細に把握する検査)
  • SPECT検査(ごく微量の放射性物質を含む薬を体内に投与して、脳に萎縮などの変化がまだ見られない初期の段階でも異常が分かる検査)
  • MCIスクリーニング検査(健常者と認知症の中間の段階にある認知症予備軍の患者を見つけるための検査)
  • APOE遺伝子検査(遺伝子を調べることで将来、認知症になるリスクの大きさを把握する検査)

費用は、検査の種類や病院によって大きく変わりますが、2割負担の場合、安価な認知機能テストでは1,000円以下、最も高額なSPECT検査は約2万円、その他の検査は約5,000円です。

2.薬の種類(名称)

認知症に使用される主な薬には以下の種類があります。薬代は、認知症の程度によって1日の処方量が変わり、費用も変わりますが、2割負担の場合、1カ月分で約2,000円から3,000円未満です。

  • アリセプト(中核症状の治療)
  • メマリー(中核症状の治療)
  • リスパダール(周辺症状の治療に使われ幻覚や妄想を抑止する効果)
  • サアミオン(周辺症状の治療に使われ脳の活動の活性化に効果)
  • 抑肝散(周辺症状の治療に使われ幻覚や妄想を抑止する効果)

第三章 介護が必要になった場合にはどれぐらいの費用が掛かるのか?

医療費と同様に慶応大学が2015年に調査結果をまとめ、厚生労働省に提出した「認知症の社会的費用を推計」によると、認知症にかかわる介護費は以下のとおりです。

介護サービス利用者1人あたりの在宅での介護費が約219万円/年、施設での介護費が約353万円/年です。この金額は介護費用総額のため、実際の自己負担額は1割から3割です。仮に負担率が1割で介護期間を10年とすると、在宅での介護の場合、約219万円です(=219万円×0.1×10年)、施設での介護の場合、約353万円(=353万円×0.1×10年)です。なお、注意点として上記の介護費には、認知症患者が骨折などのケガで介護サービスを受けた介護の費用などが明確に分離されていませんので誤差が含まれます。また、介護費用は介護度(要支援1から要介護5の7段階)や、入所施設によって大幅に費用が変わります。

ちなみに、厚生労働省が 、認知症患者に限らない要介護度5の高齢者が介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で介護を受ける場合の1カ月の自己負担費の目安を公表しています。それによると約10.2万円から14.0万円です。こちらを基準に計算すると10年間の介護費用は1,200万円をこえます。

第四章 まとめ

認知症は怖い病気ですが、医療の進歩で症状の軽い段階でも認知症と診断がつき、早期治療が可能です。認知症は、治すことはまだできませんが、特定の認知症は、薬で進行を遅らせたり、手術で症状を改善できたりします。治療が早ければ早いほど効果が期待でき、普通の自立した生活を送れるため家族にとっても早期発見・早期治療は重要です。高齢者本人は、認知症であることに気付きにくく、また認めたくない心理が働くので、家族が早く認知症の可能性を察知し、検査を進めることが必要です。

また、日頃から認知症になりにくい予防生活を送ることも大切です。予防法としては、認知症の血管性認知症の予防には、高血圧や高脂血症、肥満などにならない対策をすることで発症のリスクを抑えられます。認知症の半数を占めるアルツハイマー型認知症も、生活習慣病対策が発症のリスクを抑えたり、あるいは発症を遅らせたりすることが期待できます。その他、趣味を楽しむ、運動する、手を動かす、簡単な計算をするなど脳を活性化することで認知症の予防に効果があります。

認知症のリスクを軽減するには、日頃から認知症予防法を実施し、認知症とは思えない症状でも認知症の可能性があることから、普段とは少し違う言動をする高齢者がいたら、家族がそれに早く気づき早めの検査を受けて認知症であれば早期治療することが効果的です。


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