子どもが起こす事故・事件と親の損害賠償責任との関係
子どもは好奇心に満ちており親が予測しない行動を突然することがあります。また、子どもには自分の行為がもたらす結果に対する十分な想像力や判断力が欠けています。その結果、悪意はないけれど人や動物にケガを負わせたり、高価な器物を壊したり、傷つけたりします。不幸にもケガの程度が大きかったり、壊したり、傷をつけた器物が高価であると損害賠償問題が発生します。親としては、子どもの監督・監視には限界があり、これらの事故・事件を完全に防ぐことは困難です。
もし、子どもがこれらの事故・事件を起こしたらどうなるのでしょうか? 特に子どもが、親や学校の目を離れて遊ぶ時間が多い夏休みや冬休みなどの期間は、事故が起きる可能性が高まります。近年は、自転車による事故で高額な賠償責任が生じる事例も増加しています。そこで、子ども自身の責任や親の監督責任、および親の損害賠償責任との関係や賠償事例について解説します。
第一章 子どもの責任能力、親の監督義務と子どもの事故の高額賠償事例
1.法律が定める子どもの責任能力について
日本では、成人であれば刑事・民事の両方または片方の責任が問われる不法行為を未成年の子どもが犯しても、判断能力が不十分なことを理由に法律上の責任を負うことはありません。法律は責任を負わない子ども年齢を明示していませんが、判例では12歳から13歳未満となっています。判例ですので12歳未満は100%責任を負わなくて、13歳以上は必ず子どもに責任が生じるわけではありません。
2.子どもに責任能力がないときの親の監督義務と賠償責任
子どもに責任がないとき、被害に対する損害賠償を受けられないとしたら、被害者は事故・事件の内容によっては大変な損害を受けます。そこで、法律は、判断能力が不十分な子どもに対して親は監督義務者としての責任があるとして、子どもに損害賠償責任がなくても親は損害賠償をしなければならないと定めています。ただし、監督責任を十分に果たしていたと立証できれば損害賠償を免れることは可能ですが、一般的にそれを証明することは非常に困難であることは知っておく必要があります。
なお、子どもが自動車を無免許運転して事故を起こした場合、あるいは自転車で自転車同士または歩行者にぶつかる事故では、親の監督責任は子どもの年齢が17歳から18歳程度まで拡大されています。近年は、自転車による事故で以下のような高額な賠償責任が認められており、子どもへ注意喚起して、さらに保険に加入するなどの対策が必要です。
・賠償金額 9,521万円(神戸地方裁判所、平成25年7月4日判決)
11才の男の子が自転車で62才の歩行中の女性と衝突。女性は頭の骨を折るなどし、意識が戻らない状態となった。
・賠償金額 9,266万円(東京地方裁判所、平成20年6月5日判決)
自転車に乗った男子高校生が自転車で走行中の24才の男性会社員と衝突。男性会社員には言語機能の喪失などの重大な後遺障害が残った。

3.子どもに責任能力があると認められたときの親の賠償責任
子どもに責任能力があると認められた場合、親は賠償責任を負わねばならないのでしょうか? 実は法律にはこれに関する規定がありません。法律は、「未成年者に責任能力がないときに監督義務者が責任を負う」と定めています。この規定からは子どもに責任能力があると認められたときは、親は責任を負う必要がないと考えられます。しかし、子どもが独立して働いていれば別ですが、例えば高校生としたら子どもに責任を押し付ける親は親として世間一般から大きな非難を受けます。
最高裁判所も、被害者救済の点から子どもに賠償能力がないときは、たとえ子どもに責任能力があると認められても、親が責任を一切負わないのは妥当ではないとして、一定の条件を満たした場合は、親に賠償責任があると認めました。ただし、親の子どもに対する監督責任に大きな問題がある場合に限定されています。例えば、子どもが日頃から補導されたり、前科があったりして放置すると危害や損害を与える可能性が高いのに十分な監督や教育をしなかったなどに限られます。
なお、上記のような制限が付いて法律や裁判で賠償責任を免れても、やはり親は社会から道義的な責任を強く問われます。保険に加入していれば十分とはいえませんが、最低限の責任は果たせます。また、逆に未成年者から危害や損害を受けると、未成年者の賠償能力は低く、親からの賠償も確実ではありません。万が一に備えて自身の身を守るための保険に加入して備えておくことも重要です。
第二章 子どもにとってはいたずらの範囲でも立派な犯罪
1.いたずら心で行った遊びの行為でも犯罪になる?
子どもにとっては、遊びや軽いいたずら感覚の程度でも、その内容によっては立派な犯罪になる可能性があります。例えば、子どもにとって楽しい家の壁や塀への落書きも、使った道具や落書きの範囲などによって刑法に違反する行為になる可能性があります。落書きした場所が、外壁や外壁に密着して取り付けられ、簡単に取り外せない車庫のシャッターなどは刑法の建造物損壊罪に、建物の一部に該当しない場合は同じく器物損壊罪が適用される可能性があります。また、実際の落書き行為をしていなくても、落書きを他の子どもに指示して書かせると、教唆犯、または共謀共同正犯という罪が成立する可能性もあります。
もちろん、刑事罰だけでなく、また刑事罰が成立しなくても建物や器物の所有者から損害賠償を請求されて請求が認められる可能性があります。
2.インターネットを使った悪口の書き込みも犯罪?
近年は、インターネットの利用者が低年齢化し、親よりもむしろ子どもの利用頻度が高くなっています。利用環境もパソコンからスマホに変わり、利用するアプリも連絡手段に使えるLINEが多く利用されているなどから、利用頻度は高く、場所、時間を選ばず使われています。
今までは、子供同士の連絡手段としては、電話、口頭が多く会話の内容が記録として残ることはありませんでした。しかし、LINEではやりとりした内容が記録として残ります。さらに、LINEは相手が目の前にいなくても書き込め、またグループを作ってグループ間で書き込み内容が共有できる特徴があります。そのため、相手を傷つけるような内容でも書き込みやすく、また集団心理から過激になりやすくなっています。
これにより、軽い気持ちから始めた書き込みが、ひどくなると、侮辱罪、名誉毀損として訴えられ、また慰謝料を請求される可能性があります。これは、子ども同士であっても起こりえます。
いたずらからの落書きやLINEなどのSNSへの書き込みは避けるように子どもに教育することが大切です。また、同時に損害賠償や慰謝料の請求に保険で備えておくことも大切です。
第三章 損害賠償も入っている全国共済の子ども型共済
善悪の判断もしっかりできない無垢で純真な子どもの行為は、法律でも責任を負わせないように罪はありません。しかし、被害者からすれば、受けた傷、損害は相手が誰であろうと関係はないと考えます。法的に子どもに責任がなくても、親は監督責任を問われ損害賠償を負わねばならなくなる可能性があります。賠償金額も高額になるケースも発生しており、万が一に備える選択肢の1つとして全国共済の子ども型共済を検討が必要ではないでしょうか。
全国共済の子ども型共済には、第三者への損害賠償も含まれ、ケガの入・通院、日帰り手術などもしっかり保障されます。月々1,000円からと手軽に加入できます。0歳~満17歳の健康な子どもが加入でき、18歳になるまで保障されます。
まとめ
子どもは、大人が想像もできない行動をするので、場合によっては損害賠償責任を問われる可能性があります。近年は、子どもであっても1億円近い損害賠償が認められた事例も起きています。大切な子ども、家族を守るために保険でカバーすることをおすすめします。