避難情報の「警戒レベル」とは?災害に備えるための知識
近年、台風や線状降水帯などによる集中豪雨・強風によって土砂災害、浸水災害、暴風災害など大きな災害が毎年のように起きています。災害が予想される場合、気象庁などからさまざまな注意報や警報が発令されます。自治体は災害発生の危険度に応じて住民が身を守るための避難情報を発令します。しかし、この避難情報の用語が、住民が災害に対する行動を判断・決定するときに分かりにくかったため、2021年5月に改正されました。改正前と改正後の用語について解説し、災害の多い日本で何よりも大切な命を守るために必要な知識について解説します。
第一章 改正前の3種類の避難情報
2021年5月に災害対策基本法が改正され、今後は各自治体が「高齢者等避難」「避難指示」「緊急安全確保」の3種類を災害発生の危険度に応じて発令します。しかし、改正前には「避難準備・高齢者等避難」「避難勧告」「避難指示(緊急)」がありました。
「避難準備・高齢者等避難」とは
高齢者や体の不自由な人、乳幼児、およびその支援者などは避難が必要になったときに安全な場所へ避難するには時間がかかるため、早めの避難を求める警報のことです。また、早期避難に該当しない人には事態の悪化に備えて速やかに避難できるように避難の準備を促す警報のことです。
「避難勧告」とは
災害による被害発生の恐れが高いため、安全な場所への避難を求める警報のことです。
「避難指示(緊急)」とは
災害がすでに発生しているか、発生が危惧されるとき、直ちに指定の緊急避難場所など身の安全が確保できる場所への移動、あるいは移動が困難なときは屋内の安全な場所への避難を求める警報のことです。
第二章 「避難勧告」が廃止されて「避難指示」に一本化
2021年5月に用語が改正された理由について紹介します。
理由は逃げ遅れによる被害拡大を防止するためです。改正前には「避難勧告」の次に「避難指示」が出されていました。そのため「勧告」より強制の意味が強い「指示」が出るまで様子を見て避難しないケースが多く生じ、その結果、逃げ遅れて被害が大きくなるという問題が起きていました。そこで、「避難勧告」は廃止され、「避難勧告」の段階で「避難指示」が発令されることになりました。
そして、改正前に危険性がより高い段階で発令されていた「避難指示」の代わりに「緊急安全確保」が発令されることになりました。「避難準備・高齢者等避難」は、高齢者等の逃げ遅れをより防止するために「高齢者等避難」のみに変更されました。しかし、「高齢者等避難」の発令は高齢者だけでなく発令された地域の住民は避難に備える準備をする必要があります。
第三章 「警戒レベル」とは?
「警戒レベル」とは何か、必要な理由、および警戒レベルに応じた必要な行動について解説します。
1.「警報レベル」とは
「警報レベル」とは、災害発生の危険度を住民が直感的に理解するための情報のことです。危険度に応じて5段階のレベルがあります。
2.「警報レベル」の必要な理由
国や都道府県(気象庁や河川・砂防部局)などから災害の危険度に応じて「注意情報」「警戒情報」「危険情報」「特別警報」「災害発生情報」などの「防災気象情報」が発信されます。自治体は、その情報に基づいて災害の発生に備えた防災準備にとりかかり、さらに災害発生の危険性が高まれば危険度に応じて「高齢者等避難」「避難指示」「緊急安全確保」を発令します。
しかし、さまざまな注意報や警報が発信・発令されますが、過去にそれらの情報が住民に正しく理解されていたかというと十分に意図が伝わっていないなどの課題がありました。1つは避難の緊急度に関する誤解で避難が遅れることです。もう1つは、「防災気象情報」が発表されても自治体から避難情報が発令されないことがあり、その結果、住民の避難が遅れて被害の拡大を招いたことです。
そこで、住民が災害発生の危険度を直感的に理解でき、的確な避難行動ができるようにするため、防災気象情報や自治体の避難に関する情報に5段階に分けた「警戒レベル」が明記されることになりました。これにより、自治体からの避難行動に関する発令がなくても、通常、「防災気象情報」は自治体よりも先に発表されるため、「警戒レベル」に応じた避難準備や避難行動ができるようになります。
3.警戒レベル別の防災気象情報と住民がとるべき行動
住民の取るべき行動 | 自治体の対応 | 防災気象情報の例 | |
警戒レベル5 | 命の危険・直ちに身の安全確保を図る | 緊急安全確保の発令 (発令のない場合もあり) |
大雨特別警報 氾濫発生情報 |
警戒レベル4 | 危険な場所から全員避難する | 避難指示の発令 | 土砂災害警戒情報 氾濫危険情報 |
警戒レベル3 | 危険な場所から高齢者等は避難する | 高齢者等避難の発令 | 大雨警報 洪水警報 |
警戒レベル2 | 自らの避難行動を確認する (リスクや避難場所の確認等) |
大雨注意報 洪水注意報 |
|
警戒レベル1 | 災害に備える意識を高めておく | 各種の早期注意情報 |
詳しくは首相官邸の「防災気象情報と警戒レベル」、気象庁の「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」などで確認してください。
第四章 災害への備え・避難を確実・安全に行うために必要なこと
災害に備えるには常日頃から準備が重要です。また、安易に安全だと判断しないことが必要です。
1.災害に備えるためにあらかじめ知っておきたい人間心理について
国や自治体からさまざまな情報が発信されても、その情報を正しく受け止めて必要な行動を取らなければ身を守れません。しかし、個人差はありますが、多くの人に合理的な判断を誤らせる心理が働きます。災害から身を守るためには合理的な判断を誤らせる人間の心理について理解しておくことが大切です。
1-1 「得より損をしたくない」意識が強く働く
損をしたくない心理が強く働くことを心理学では「損失回避の法則」と呼びます。損失回避の法則とは、人が利益と損失どちらかを選ぶ際に、無意識に損を避けるほうを選ぶ心理傾向のことです。
避難に関しても、災害が起きない可能性があると考えると「避難は無駄=避難は損」と考えてしまう可能性があります。すると本当に危険が身に迫るまで避難しないで、結果として被害に遭ってしまうことが起こります。避難は決して「無駄=損」ではないと考えるようにする必要があります。
1-2 合理的な判断を誤らせる先入観・バイアスが強く働く
人間は、予期しない事態に遭遇したときなどに、自分にとって都合の悪い情報を無視や過小評価し、また自分だけは大丈夫と考える心理が働きます。心理学でこのような働きを「正常性バイアス」と呼びます。「正常性バイアス」は避難を遅らせます。状況を冷静に考えると直ちに避難が必要な事態にもかかわらずじっとしている人がいることが、過去の災害などで分かっています。
また、人間には、すでに持っている先入観や持論に都合のよい情報ばかりを集めて、都合の悪い情報を無視する心理が働きます。心理学でこのような働きを「確証バイアス」と呼びます。この地域での災害は起きない、あるいは起きにくいという先入観を持っていると、都合の悪い情報を聞いても無視したり、あえて聞かないようにしたりして自分に都合のよい情報ばかりを探し出して安心することが起こります。これも避難を遅らせて被害を大きくする原因の1つです。人間には意識していなくても、これらの心理が多くの人に多少の強弱はあっても起こります。災害の発生の危険性があるときには、これらの心理は避難を遅らせ、被害を拡大させるおそれがあります。
2.避難を安全・確実に行う方法
- 高齢者等避難、避難指示などの避難情報の発令が出ない場合でも、危険を感じたら早めに自主的に避難します。
- 実際に避難するときは近所の人にも声をかけて、なるべく集団で避難します。
- どこに避難すればいいのか、どの道を通れば安全に避難できるのか、避難場所、避難ルートをあらかじめ確認しておきます。災害時は、建物などが倒壊して避難経路をふさいでしまうことも考えられます。日頃から複数の避難先・避難ルートを考えておくことが重要です。
- 避難は、指定された避難所に行くことだけが避難ではありません。ハザードマップで安全な親戚、友人、知人宅への避難、あるいは旅館、ホテルへの宿泊避難、または高層マンションなどの位置を把握してそこへの避難などを考慮しておくことも大切です。
- 電気のブレーカーを切り、ガスの元栓を閉めてから避難します。
- 地震の場合、揺れが収まってから避難します。
- 避難は、頭を守り徒歩で行います。
- 救助や支援が受けられるまでの食料・飲料水やケガの応急手当のための救急薬品などを持って避難します。
第五章 まとめ
災害への備えを十分にしておけば、身の安全については被害を防ぎ、また起きたとしても最小限にとどめることが可能です。しかし、建物・家財などの資産への被害は避けることが不可能です。被災からの生活再建を早期に行うためにも手頃な掛金で加入できる全国共済の「新型火災共済」への加入をおすすめします。
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