海外旅行と保険と共済と夏休み【海外旅行保険について】

2018年6月29日

もくじ

海外旅行と保険と共済と夏休み

2017年の日本人の海外旅行者数は観光庁によると約1,800万人弱で過去最高でした。今年も、特に夏休み期間中は多くの人が海外旅行にでかけます。その際、事故や病気・ケガに備えて海外旅行保険に加入する人は5割程度(リクルート社調べ)です。海外の医療費は高額になることも多く十分な補償を受けられるようにすることは重要です。

しかし、海外旅行保険に加入しなくても、あまり多くの人に知られていない海外での医療費の一部が健康保険から払い戻しされる制度や、一般的な病入院保障がついている生命保険に加入していれば条件付きですが、海外で支払った治療に対しても一部治療費の払い戻しを受けられます。また、クレジットカードに加入していれば、カードに付帯の海外旅行保険からも補償が受けられます。そこで、夏休みなどを利用して海外旅行に出かける計画のある人に海外旅行中の病気・ケガへ賢い備えができる情報について紹介します。

海外旅行保険のパンフレット

第一章 海外旅行で病気・ケガをしたら、入院したらどうなるの?

海外で病気やケガで入院したときの費用はいくらかかるのかご存じですか? 海外では日本の健康保険が無条件に利用できないこと、一般的に海外の医療費は高額であること、さらに、症状が重い場合は家族が現地に行く必要があり、その費用も必要なことから極めて高額になることがあります。海外旅行保険に加入する目的は、高額で支払えないほどの出費に備えるためですから、高額な治療費が発生した実例や参考のためにクレジットカードに付加されている海外旅行保険の補償概要などについて紹介します。

1.海外の医療費の状況

海外の医療費は欧米の先進国は一般的に高額です。一方、発展途上国では、日本よりも安い国もありますが、衛生環境が悪く体調を崩す可能性が高いというリスクがあります。外務省は、「世界の医療事情」というページで海外の主な都市での医療費を案内しています。そのなかからアメリカで特に高額といわれるニューヨーク市マンハッタン区の医療費事情を引用して紹介します。

===以下、引用
「マンハッタン区の医療費は同区外の2倍から3倍ともいわれており、一般の初診料は150ドルから300ドル、専門医を受診すると200ドルから500ドル、入院した場合は室料だけで1日数千ドルの請求を受けます。例えば、急性虫垂炎で入院し手術後腹膜炎を併発したケース(8日入院)は7万ドル、上腕骨骨折で入院手術(1日入院)は1万5千ドル、貧血による入院(2日入院、保存療法施行)で2万ドル、自然気胸のドレナージ処置(6日入院、手術なし)で8万ドルの請求が実際にされています。治療費は、診察料、施設利用料、血液検査代、画像検査代、薬品代などとそれぞれ別個に請求されるので注意する必要があります。」(外務省:世界の医療費事情
===引用終わり

2.2016年度に海外旅行保険で支払われた高額保険金のランキング

JTBの「2016年度の海外旅行保険事故データ」によると2016年の高額な保険金の支払い事例は以下のとおりです。ただし、紹介されている金額は保険の支払金額のため家族が現地まで駆けつけた費用なども含まれています。なお、高額な医療費は65歳以上の高齢者が約半数を占めています。

1位:3,890万円(カナダ)
脳炎と診断され19日間入院。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送された費用や家族の渡航費用を含む。

2位:2,528万円(アメリカ)
くも膜下出血と診断され19日間入院。家族の渡航費用を含む。

3位:2,367万円(サイパン)
飲酒後に転倒、後頭部を強打し10日間入院。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送された費用や家族の渡航費用を含む。

4位:1,836万円(アメリカ)
心不全と診断され5日間入院。家族の渡航費用を含む。

5位:1,582万円(オーストラリア)
エスカレーターに服の裾を巻き込み転倒し24日間入院。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送された費用や家族の渡航費用を含む。

3.2016年度以外に海外旅行保険で支払われた高額保険金

JTBによると2016年度以外には以下のような超高額の保険金が支払われた例もあります。

・9,335万円(アメリカ)
肺塞栓症・肺炎・肺結核で49日間入院・手術。家族の渡航費用を含む。

・6,080万円(アメリカ ハワイ)
胃腸炎・肺炎・敗血症で16日間入院。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送された費用や家族の渡航費用を含む。

・5,664万円(アメリカ)
車にはねられ脳挫傷・くも膜下出血で33日間入院・手術。家族の渡航費用を含む。

4.クレジットカードに付加されている海外旅行保険の補償限度額

海外旅行のとき海外旅行保険に加入しない理由の1つにクレジットカードで海外旅行保険が利用できるからという理由があります。クレジットカードで補償される金額は、一般的にゴールドカードであっても300万円程度です。高額な医療費に対してはクレジットカードだけでは不足します。

パスポートとドル紙幣

第二章 海外旅行保険に加入したときに受けられる主な補償内容

海外旅行保険に加入する目的は、主に高額になる医療費の負担を軽減するためですが、医療費の他にもさまざまな事故、トラブルに対して保険金が支払われます。海外旅行保険の補償内容について、三井住友海上火災保険株式会社の場合について簡単に補償内容を紹介します。基本的な補償内容・範囲については他の保険会社でも同程度の補償を受けられますが、詳細については、各社の最新の補償内容の確認が必要です。契約時期によっても補償内容は変動します。また、保険金の支払い対象になっていても詳細な支払い条件が定められ、それらを満たさないと支払われません。事前に確認が必要です。

1.海外で病気や事故でケガをした治療費など

死亡保険金、後遺障害に対する保険金、治療費、救援・捜索費用などが補償されます。ただし、保険加入者の過失などや既往症、歯科疾病、妊娠・出産・早産または流産およびこれらを原因とする病気は疾病治療費用の支払いの対象となりません。(疾病に関する応急治療・救援費用、緊急歯科治療費用を補償する場合は除く)

2.親族が現地に行く交通費・宿泊費など

無条件ではなく入院期間、人数、回数などに関して一定の制限が定められています。

3.身の回り品が破損したり盗難にあったときの損害額

無条件ではなく、紛失または置き忘れによる損害は対象外です。また、支払い限度額が定められています。

4.法律上の賠償責任を負ったときの損害額

旅行中にレストランやホテルの備品を壊してしまったとき、他人にケガをさせたときなどの損害に対して支払われます。ただし、法律上の損害賠償責任が発生しない場合や事故状況などにより支払われない場合があります。

5.航空機や航空会社に預けた手荷物の到着が遅延したために自己負担した費用

宿泊代・食事代、身の回り品などの購入費などが含まれます。テロにより帰国が遅れたときも含まれます。なお、加入プランによって補償内容が同一ではなく異なることがあります。

6.旅行前の病気の症状が急激に悪化したときや突然の歯痛などで治療を受けたときの費用

加入プランによって補償内容が同一ではなく異なることがあります。

7.ケガ、盗難、交通機関の遅れなど偶然おきた事故に遭ったときに発生した費用

加入プランによって補償内容が同一ではなく異なることがあります。

8.弁護士費用

旅行中の被害事故に対して弁護士に委任して損害賠償請求をしたとき、および弁護士に法律相談するなどしたときの費用が補償されます。

9.オプション補償

9-1 ペットを預け入れした延長費用
予定通りに帰国ができなかったとき施設に預けていた犬またはねこの預け入れ延長費用などが補償されます。

9-2 旅行変更費用
ケガや病気により旅行をキャンセルした費用、および中途で帰国したときの費用などが補償されます。

9-3 自動車運転者損害賠償責任
旅行中にレンタカーによる事故で損害賠償責任を負ったときの費用などが補償されます。

9-4 緊急一時帰国費用

旅行中に親族が死亡、危篤などで緊急に一時帰国したときの費用などが補償されます。

パスポートと人形

第三章 健康保険の「海外療養費制度」とは

1.海外で支払った医療費の一部が払い戻しされる海外療養費制度とは

「海外療養費制度」とは、海外旅行中や海外赴任中に病気やケガでやむを得ず現地の医療機関で治療などを受けたときの医療費が、加入している健康保険または国民健康保険から払い戻しされる制度のことです。払い戻しを受けるには帰国後に申請が必要です。払い戻しを受けられる医療費は、一定の要件を満たしている医療費の一部です。なお、申請をしなければ払い戻しされません。そのため、制度があることを知って忘れないように申請をすることが必要です。また、申請期限があり、海外で治療費の支払いをした翌日から2年を経過すると時効で申請できなくなります。

2.払い戻しされる医療費の範囲

払い戻しを受けられるのは、支払った医療費全額ではありません。以下の要件を満たす医療費が払い戻しを受けられます。

2-1 日本国内で保険が適用される医療行為に対して支払った医療費

日本と海外の国では保険が適用される医療行為や薬が同じではありません。そのため、日本国内で保険が適用されない医療を受けるとその費用は払い戻しされません。また、例えば臓器移植の治療目的で海外へ行き、支払った医療費は保険が適用される医療であっても払い戻しされません。やむを得ず海外で治療を受けたときに限定されます。その他、差額ベッド代、食事代、家族が現地へ行く費用、チャーター機の費用なども払い戻しされません。

2-2 払い戻しの金額

海外で受けた医療でそれが保険適用されれば、日本国内の医療機関で同じ内容の医療を受け治療した場合にかかる費用が計算されて、その費用から自己負担分(一般的に3割)が控除された残りの金額が払い戻しされます。海外の医療機関に支払った費用が、日本国内での費用より低かったときは、海外で支払った費用から自己負担が控除された残りの金額が払い戻しされます。海外通貨と日本円との為替レートの違いは、支給決定日の為替レートで計算されて日本円で払い戻しされます。

3.申請に必要な主な書類

3-1 海外療養費支給申請書
3-2 診療内容明細書(担当医が記入)、および日本語に訳した書類
3-3 領収明細書(歯科の場合は歯科診療内容明細書)(担当医が記入)、および日本語に訳した書類
3-4 医療機関に治療費を支払った領収書の原本
3-5 受診者の海外渡航期間がわかる書類
3-6 同意書

その他にケガをした場合、本人が死亡し相続人が請求する場合などで必要になる書類があります。

第四章 共済などの民間保険は海外で支払った医療費を補償してくれる?

生命保険文化センターの平成28年度「生活保障に関する調査」によると8割以上の人が生命保険に加入し、そのうちの少なくとも約9割は疾病入院保障がついている生命保険に加入しています。

共済や民間保険会社の疾病入院保障がついている生命保険に加入していると、多くの場合、海外で入院・手術をしたときも補償が受けられます。ただし、保険が適用されるのは日本の医療法が定めている日本国内の病院や診療所と同等の医療施設で治療を受けた場合、および資格を持った医師のもとでの入院治療を受けた場合です。詳細な適用条件は、加入している保険やそれぞれの共済、保険会社で確認が必要です。

全国共済の場合は、「海外での入院・通院費用に対する支払いは、全国共済が医療施設として認定できる施設での治療費」となっています。また、海外で亡くなった場合でも、国内と同様に支払いの対象です。その他の共済も基本的には同様ですが、詳細は各共済に確認が必要です。

空港と女性

第五章 まとめ

海外旅行中に思わぬ病気や事故で医療費がかかることがあります。健康保険が海外では利用できないため、一般的には海外旅行保険に加入して高額な医療費に備えますが、保険料が高額です。また、あまり知られていませんが、海外での医療費も日本で受けられる保険適用の医療費であれば一部が払い戻しされる「海外療養費制度」を誰でも利用できます。また、共済や民間保険会社の疾病入院保障がついている生命保険に加入していると、一定の条件は付きますが、保険料が支払われます。

そのため、自身の健康状態、年齢、旅行先、日数などと、疾病入院保障が付いた生命保険への加入の有無や補償内容、およびクレジットカードの加入の有無などを検討することで高額な保険料を抑えて合理的な補償を受けられます。共済に未加入であれば民間の保険よりも保険料が安いために、海外旅行前に加入しておくとよいでしょう。

 

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