夏に猛威を振るう感染症に備えましょう
夏は、暑さで食欲不振、質の良い睡眠が取りにくく睡眠不足などで体力が弱って、免疫力が低下します。すると、通常は免疫力が高ければ細菌やウイルスに負けないで病気の症状が出ないのに免疫力が低下してくると発症します。そこで、夏によく流行する感染症の病名や原因・症状・予防方法、および発症したときの対処法について紹介します。
第一章 なぜ夏に感染症が流行するの?
夏に感染症が起こりやすいのは、夏の気候の環境で活発に活動する細菌、ウイルス、真菌、微生物が存在しており、それらが皮膚や粘膜などから体内に入り込んで増殖し、さまざまな症状を起こすからです。通常であれば、人間を含む生物には、細菌、ウイルスなどの有害物や異物が体内に侵入すると、それらを体から排除する「免疫機能」が備わっています。しかし、夏には、以下の理由で免疫力が弱くなり、感染症に感染したときに発症しやすくなって流行します。
- 厳しい暑さが続くことで多くの人が食欲不振や寝苦しさから睡眠不足に陥って体力が弱まる
- 暑い場所や冷房が効きすぎた場所に出入りすることで、自律神経が乱れて「冷房病」と呼ばれる症状になって体調が悪化する
- 気温・湿度が高くイライラしてストレスを感じる など
免疫力は、加齢、睡眠不足、栄養不足、激しい運動、ストレス、不規則な生活などで低下します。また、乳幼児や妊婦、喫煙者、持病のある人などはもともと免疫力が低いため夏にはさらに免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。なお、食欲がある人でも栄養バランスが悪いと免疫力は低下します。食欲がないからといって、好きなものだけを食べることで食欲不振を回避しても免疫力はあまり高まりません。
第二章 まず家庭でできる対策で感染症を予防!
1.手洗い・うがいの励行
外出先から帰ったとき、トイレから出たとき、食事前に手洗いをすることで細菌、ウイルスを洗い流し、感染症になるリスクを減らせます。厚生労働省は、手洗いは、せっけんで手のひら、手の甲、手首、指・爪の先、指と指の間を2度繰り返して洗うことを推奨しています。公益社団法人日本食品衛生協会が推奨する手洗いの手順はこちらです。洗った後は、清潔な乾燥したタオルで手をふきます。外出先から戻ったら、うがいをすることも感染症の予防に効果があります。
2.規則正しい生活を送り、栄養十分な食事を摂って免疫力をアップ
不規則な生活にならないように規則正しい生活をしながら、睡眠不足にならないように十分な睡眠を取るようにします。食事は、栄養バランスに気をつけて、特に免疫力を高めるには腸の働きが重要なことが分かっており、腸を健康にするためにヨーグルトなどの発酵食品、食物繊維、オリゴ糖などの摂取が必要です。また、免疫細胞を活性化させるために必要な栄養素として、豆腐、肉、乳製品などの良質なタンパク質、およびビタミン類、特にビタミンA、C、Eや亜鉛、銅、マンガンなどのミネラル類を摂取します。さらに、ワイン、緑茶などに多く含まれるポリフェノール、植物油や青魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸、βカロテンなどを摂取することは免疫力を高めるには効果的です。
3.適度な運動、適切な休息
免疫力を高めるには、バランスのよい食事のほか、適度に体を動かし、ストレスをためないことも大切です。また、疲れを蓄積させないように適切な休息をしっかり取ることも大切です。
4.良好な室内環境
必要に応じて、エアコン、扇風機、すだれなどを利用して室内環境をできるだけ快適な環境にするほか、冷却スプレーなどの冷却グッズを使って暑さ対策を行います。そのほか、高齢者や乳幼児、持病のある人がいれば除菌スプレーやシートで室内を除菌するのも効果的です。
第三章 夏に起こりやすい感染症とその予防方法および発症したときの対処法
夏に起こる主な感染症の病名、その原因や個別の予防方法、および感染症を発症したときの対処法について紹介します。感染症を予防するには現時点で、どの感染症が流行っているかをあらかじめ把握して本格的な流行が始まる前から感染しないように注意すると効果的な予防ができます。感染症の都道府県別の流行状況は、「感染症アラート」というサイトで、1週間単位で掲載されています。
1.プール熱(咽頭結膜熱)
1-1 原因・症状
プール熱(咽頭結膜熱)は、主にプールで感染することが多く、アデノウイルスと呼ばれるウイルスが目や口から侵入することで起こります。主な症状は、発熱、のどの痛み、目の充血などです。おう吐や下痢の症状が出ることもあります。感染は、プール以外でも飛沫(ひまつ)感染、接触感染で起こります。患者全体の6割程度を5歳以下が占めます。なお、プールでの塩素消毒がしっかり行われていればアデノウイルスは塩素に弱いので問題ありません。
1-2 予防方法・対処法
予防は、毎日、食事前の手洗い、うがい、水泳の前後にはシャワーを必ず浴びるのが効果的です。また、タオルなどは自分専用のものを使い共用は避けます。プール熱に効果的な治療薬は、まだできてないので病院に行くと対症療法が行われます。症状が重くなければ脱水状態にならないように注意して自宅で安静にして療養することで回復できます。なお、プール熱は、学校保健法で第二種伝染病になっており、回復後に学校や幼稚園に行く時期が規定されています。通学、通園の許可は、主な症状の発熱、のどの赤み、充血が消えてから2日後です。その判断は、医師でないと困難なので、かかりつけの医師に相談し許可を得ることが必要です。なお、症状が消えても、1カ月位はまだ便にウイルスが混じっており、トイレの後は手をきれいに洗うことが大切です。
2.ヘルパンギーナ
2-1 原因・症状
ヘルパンギーナは、主にコクサッキーウイルスA群と呼ばれるウイルスが体内に侵入することで起こります。主な症状は、発熱、口のなかに小さな水ぶくれや潰瘍ができるほか、喉の炎症、下痢、口の痛みによる食欲低下などです。患者全体の約9割が5歳以下の幼児です。
2-2 予防方法・対処法
プール熱(咽頭結膜熱)と同じく毎日、食事前の手洗い、うがいを徹底します。症状が消えても、2週間から4週間くらいは便にウイルスがまだ混じっており、トイレの後は手をきれいに洗います。ヘルパンギーナにも効果的な治療薬がまだないため症状が重くなければ自宅で療養することで回復します。始めの3日間ほどは高熱がでますが、水分補給と休息、解熱剤などを服用すると1週間程度で回復に向かいます。
3.手足口病
3-1 原因・症状
手足口病は、ヘルパンギーナと同じウイルスのコクサッキーウイルスA群に分類されるウイルスが体内に侵入することで起こります。コクサッキーウイルスA群にはいろいろな種類のウイルスが含まれ、ヘルパンギーナを発症するウイルスと同じではありません。主に4歳以下、なかでも2歳以下の幼児が多く発症し、症状は、主に手、足、口のなかなどに水ぶくれができます。発熱しても38度以下がほとんどで比較的軽いですが、重症化することがあり注意が必要です。
3-2 予防方法・対処法
予防方法は、手洗い、うがいの励行です。プール熱、ヘルパンギーナと同様に効果的な治療薬はまだありません。症状は、比較的軽いので症状が重くならなければ、脱水状態にならないように注意して自宅で療養します。なお、まれに急性髄膜炎(ずいまくえん)や急性脳炎などの合併症をひきおこすことがあるので、症状が重い場合は医師に診察してもらうことが必要です。
4.リンゴ病(伝染性紅斑)
4-1 原因・症状
リンゴ病(伝染性紅斑)は、ヒトパルボウイルスB19と呼ばれるウイルスが体内に侵入することで起こります。5~9歳の患者が多く、主な症状はせき、鼻水、微熱など軽いカゼの症状が最初に出て、その後、赤い発疹(はっしん)がほおの辺りに出ます(出ない場合もあります)。発疹は、手足にまで広がります。リンゴ病は、一度発症すると免疫ができて、その後は発症しないと考えられています。妊娠早期に感染すると、流産あるいは死産する可能性があります。妊娠後期では、流産・死産のリスクはかなり低いですが、注意は必要です。
4-2 予防方法・対処法
予防方法は、手洗い、うがいの励行です。上記3つの感染症と同じく効果的な治療薬は開発されていません。家庭に感染者がいると約50%、学校で流⾏すると感染した小児がいるクラスでは、10%から60%が感染すると言われています。妊婦は家庭に感染者がいたり、地域でリンゴ病が流行しているときは医師の診断を受けるようにしましょう。
5.風疹(三日はしか)
5-1 原因・症状
風疹(三日はしか)は、風疹ウイルスが体内に侵入することで起こります。子どもに多いとされていましたが、近年は乳幼児期に予防接種を受けていなかったために大人の感染者が増加しています。症状は、発疹が顔・胸に広がり、リンパ腺が腫れます。多少の発熱を伴いますが、4~5日で症状は薄らいでいきます。症状がなくなるまでは子どもの場合、幼稚園・学校は休ませます。妊娠2カ月以内程度の妊婦は、風疹にかかると障害をもった子どもが生まれるリスクが高くなるので十分な注意が必要です。
5-2 予防方法・対処法
風疹には、予防できるワクチンがあり、無料で接種できます。1歳のときと小学校入学1年前の間に1回ずつ、ワクチンを計2回接種することで風疹を予防できるとされます。幼児のときにワクチンを受けていなければ、妊娠を希望する前にワクチン接種を受けておくことが推奨されます。妊娠初期の女性が風疹ウイルスに感染すると、「先天性風疹症候群」という先天的な病気が子どもに生じる可能性があります。なお、ワクチン接種は、妊娠していない時期(生理中またはその直後がより確実でおすすめ)に接種し、妊娠していない場合でも、接種前1カ月と、接種後2カ月の期間は避妊が必要です。大人のワクチン接種費用は有料ですが、一定の条件を満たすと地方自治体による費用の一部助成があります。接種する場合は、お住まいの自治体の窓口で詳細を確認してください。
感染したら、水分を十分に補給し、発熱時には頭部を冷やします。なお、体が熱いのに手足が冷えてしまうことが多いことから、暑すぎない程度に靴下や手袋などで手足の先が冷えないように注意します。風疹と思われる症状が確認できたら、すぐに医師の診断を受けましょう。そして、他の人への感染を防止するために幼稚園、学校、職場などには行かず、熱が下がってからも3日間程度は休みましょう。
6.流行性角結膜炎
6-1 原因・症状
流行性角結膜炎は、主にプール熱を引き起こすウイルスと同じ仲間のアデノウイルスのなかの一部のウイルスが体内に侵入することで起こります。主な症状は、目やにが出て目の充血、目の痛み、まぶたの腫れなどです。新生児や乳児が発症すると、他の細菌との混合感染で角膜に孔(あな)があいてしまうリスクがあるので注意が必要です。また、乳幼児の場合、カゼの症状を伴うことが多く見受けられます。
6-2 予防方法・対処法
感染は、アデノウイルスが付着した手・指やタオルなどによって接触感染します。アデノウイルスの感染力は強く、手洗い・手・指、身の回り品を消毒すると効果的です。症状が治まった後も、2週間程度はウイルスを排出し続けることがあるので、トイレの後は手をきれいに洗うなど引き続き感染しないように予防を心がけることが必要です。
まとめ
主に夏に流行する感染症の病名や原因・症状・予防方法、および感染してしまったときの対処法について紹介しました。重症化することや妊娠していると注意が必要な感染症があります。常日頃から免疫力を高め、流行しそうになったら早めに予防策を講じることで感染症にかかるリスクを大幅に軽減できます。また、万が一、重症化すると医療費の負担も大きくなります。感染症に限らず病気やケガに備えて生命共済に加入しておくと安心できます。
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