なぜ日本は先進国で唯一「がん」が増加しているのか?

日本人の平均寿命は、世界保健機関(WHO)の2018年度版の報告書 によると女性が87.1歳で世界1位、男性が81.1歳で世界2位、男女の平均では84.2歳で世界1位です。この数字だけを見ると日本は健康大国で健康志向も強まっており、この状態を続けていくことで何の問題もないように思えます。

しかし、日本人の死因で最も多いがんに大きな問題があります。それは、がんによる死亡者数が増加しているのは先進国では日本のみであるという問題です。日本では2人に1人ががんになって、3人に1人ががんで死ぬといわれています。がんにならないように毎日の生活に気をつけて、早期発見・早期治療に徹することで、がんによる死亡を減らせると平均寿命をもっと延ばせる可能性があります。さらに負担が大きくなるがんの治療費が抑制でき、長くなる平均寿命を健康で過ごせる期間も長くなって生活の質(QOL)も高められます。そこで先進国で日本のみが、がんの患者数が増加していること、その理由、およびがんになるリスクを減らすにはどうすればよいかについて紹介します。

第一章 がんの新規患者数、アメリカでは7%減少、日本は15%増加

国立がん研究センターのデータ によると、がんによる死亡者数は2000年の約29.5万人から2017年は37.3万人と1.26倍に増加。がんと新たに診断された人は2000年の53.2万人から2016年は99.5万人と1.87倍に増加しています。一方、先進国の欧米では毎年がんの死亡者数は減少しています。WHOのデータでアメリカと比較すると、10万人あたりの新規患者数は、日本は2010年に266人と2000年に比べて15%増加。一方、アメリカは303人と同期間に7%減っています。死亡者数も、東京大学医学部附属病院の中川恵一准教授によると1995年の時点では同程度であったのが、10万人当たり日本人の死亡者数はアメリカの約1.6倍も多くなっています。

がんの新規患者数の増加は、高度な検査設備など医療技術の進歩で、昔なら見つからなかった早期のがんが発見されることでも生じます。しかし、その場合は、進歩した治療技術で死亡率や死亡者数が減少していくのが一般的です。欧米などの先進国では、そのとおりに進行しています。先進国のなかでも、日本の医療はトップクラスで、特に手術の技術は世界一ともいわれています。しかし、唯一日本だけが異なり、がんによる死亡者数が増え続けています。その理由はなぜなのでしょうか?

第二章 日本の医療はトップクラスなのにがん患者が増加する理由

理由1 高齢化の進展によるがん患者の増加

がんは遺伝子の異常が年々積み重なることで発症します。そのため高齢者ほどなりやすい病気です。国立がん研究センターのデータでも、50歳から54歳のがん患者数に対して、60歳から64歳のがん患者数は約2.9倍に増え、70歳から74歳になると約3.7倍にも増加します。高齢化が進展すれば、がん患者数は必然的に増加し、がんによる死亡者数も増加します。日本は他の先進国と比較しても高齢化のスピードが速く、がん患者数とがんによる死亡者数が増加する一番大きな理由になっています。日本のがん死亡者数は、団塊の世代が80代後半になる2030年から2035年くらいまでは、増加し続けると推測されています。

なお、日本の65歳以上の高齢者が総人口に占める割合の高齢化率は世界1位の24.4%で、アメリカの13.6%と比較すると高いのですが、他の先進国と比較すると極端に高くありません。例えば、ドイツ21.1%(世界2位)、イタリア20.8%(同3位)、フランス17.5%(同16位)と高齢化が進展しているのは日本と同じですが、これらの国ではがんの死亡数は増えていません。単に高齢化率の違いだけではない理由が考えられます。

理由2 食生活の違い

高齢化率の違い以外に考えられる主な理由の1つが、食生活に対する国の国民に対する啓もうです。アメリカでは、がんなどの現代病に対する医療費が増加し続けて国家の財政を圧迫していることが1970年代から問題視されて、当時の大統領が、栄養問題特別委員会を設置。国民の栄養と病気の関係を調査し、がんなどの現代病を減らすには食事の内容を変えなくてはいけないという結論に至ります。その結果を受けて、アメリカ食品医薬品局(FDA)やアメリカ国立がん研究所が、健康のための数値目標の設定や、がんの予防に効果のある食べ物の研究を進め、その成果を国民に知らせることを徹底したため、1992年以降、増え続けていたがんの死亡数が減少に転じました。

なお、日本の和食はアメリカのように食生活を変える必要がないほど健康食であることから、食生活の違いは関係がないように思えます。しかし、和食は確かに欧米の食事よりは健康食かもしれませんが、実際に日本人が食べている食事は、自分たちが思っているほど健康的ではありません。食の欧米化が進み、肉の摂取量は50年間で約10倍、脂肪分は約3倍に増加。逆に、野菜や果物の消費量は減少し、アメリカを下回っています。加えて運動量も減少していることから、一般的なアメリカ人よりも健康的な食生活を送っているとはいえないようです。また、日本人と欧米人には体質に差があり、同じ食生活をしていても、日本人のほうが糖尿病になる確率が高いといわれています。糖尿病になると、発がんリスクが2割ほど高まることが分かっています。

理由3 がん検診の受診率の低さ

がんの患者数・死亡者数が多い理由として高齢化や食生活以外に、がん検診に対する意識の低さが考えられます。例えば、乳がんの検診を受けるように自治体が呼びかけていますが、2015年の日本の受診率は41%で、アメリカの80%の約半分しかなく、先進国平均の61%も大きく下回っています。乳がんだけでなく新規患者数が日本で最も多い大腸がんでも、アメリカでは早期に内視鏡検査を行って、小さいうちに発見して取り除くことが定着していますが、日本は早期発見・早期治療が遅れています。

その結果、アメリカは乳がんによる死亡率が2013年までの20年間で36%低下しましたが、日本は逆に33%上昇しています。乳がんの死亡率の上昇は、先進国では珍しいとされていますが、その原因の1つは検診による早期発見・早期治療の遅れです。また、大腸がんによる死亡者数(男性)は、アメリカは年々低下し、2013年に10万人あたり10人だったのに対し、日本は低下することなく42人と高止まりしています。検診を受けると「がんが見つかるかもしれないので受けるのは嫌だ」という気持ちを捨てて、がんになったときのほうが、もっと嫌なことになると思って受診を早めにすることが重要です。

理由4 がん予防対策の違い

アメリカは、食生活の改善を国民に啓もうしましたが、それ以外にも喫煙対策を早くから厳しく行った結果、肺がん患者数・死亡者数がはっきりと減少しています。日本でもさまざまな対策が打ち出されていますが、肺がん患者はアメリカでは2000年比で21%減少、日本は逆に6%増加しています。WHOのデータによると2016年の男性の喫煙率は、アメリカの25%に対して日本は34%と対策の結果に大きな差が生じています。

理由5 治療法の違い

日本では、がんは手術で治すという先入観があり、がんの治療を行うのは外科医というのが一般的です。そのため、がんを取り残す可能性があると分かっていても、まず手術が多く選択されます。しかし、欧米では多くのがんで手術と放射線治療の治癒率は同じというデータがあり、外科医と放射線科医、抗がん剤を専門とする腫瘍内科医の3者が、患者にとってベストな治療法を話し合って治療を行うのが一般的です。日本での放射線治療の割合は約25%ですが、アメリカでは60%程度と手術の比率は高くありません。

日本で手術が主に選択される理由として上記以外の理由に加えて、病院の収入になる診療報酬が手術を行うほうが多くなるという病院経営上の問題もあります。放射線治療や抗がん剤治療は、通院で行えるようになってきています。しかし、放射線治療の診療報酬は高くなく、また特に東京のような都市部では、差額ベッド代による収入がないと経営が成り立たない病院が多く存在しています。そのため身体に負担が少なく、通院治療ができれば患者にとってはベストであっても手術が選択されるという問題も起きています。

がんの手術は、放射線治療と比較して患者の身体への負担は大きく、合併症を引き起こして死に至るリスクが圧倒的に高くなる可能性があります。患者を中心に考えた医療が提供できれば、がんによる死亡をもっと減らせますが、現状の日本の医療は、がん治療も含めて医療者の立場からしか考えられていないことが多いという医師の指摘があります。

第三章 がんのリスクを減らすには?

公益財団法人 がん研究振興財団は、「がんを防ぐための新12か条 」として以下を公開しています。

  1. たばこは吸わない
  2. 他人のたばこの煙を避ける
  3. お酒はほどほどに
  4. バランスのとれた食生活を
  5. 塩辛い食品は控えめに
  6. 野菜や果物は不足にならないように
  7. 適度に運動
  8. 適切な体重維持
  9. ウイルスや細菌の感染予防と治療
  10. 定期的ながん検診を
  11. 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
  12. 正しいがん情報で、がんを知ることから

がんの原因の多くは、たばこや飲酒、食事などの日常の生活習慣にかかわっています。2005年に発生した日本人のがんのうち、男性の場合、喫煙・受動喫煙(30%)、感染(23%)、飲酒(9%)の順に、女性の場合、感染(18%)、喫煙・受動喫煙(6%)、飲酒(3%)の順に大きな原因を占めていたと推定されています。その他の生活習慣も合わせると、男性のがんの半数、女性のがんの3分の1は、生活習慣が健康的であったとしたら、また、がんの原因となるウイルスや細菌に感染していなかったら、がんを予防できたものと考えられています。

第四章 まとめ

がんになるリスクを軽減させる取り組みをしても、がんを完全に予防することは困難です。がんになったときの備えが必要です。全国共済では特約として付加できる「新がん1型特約」があります。月額の掛け金1,000円で、以下の保障が受けられます。万が一に備えて特約を付加することをご検討してください。

  • がんと診断されると50万円
  • がんで入院すると1日目から無制限(支払い日数限度なし)で1日当たり5,000円
  • がんで通院すると1日目から60日目まで1日当たり2,500円
  • 所定のがん手術を受けると5万円・10万円・20万円
  • 所定のがん先進医療を受けると1万円〜150万円

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