備えて安心 自転車保険や個人賠償責任保険について
最近、自転車事故で数千万円をこえる損害賠償金を命じる判決が増加しています。自転車は子どもが利用することが多く、十分な注意ができずに大きな事故を起こす可能性があります。2013年に自転車事故で1億円に近い損害賠償額が命じられ大きな衝撃を多くの人に与えた事故の概要と高額になった理由、および子どもの事故の場合、親が責任を負わねばならない理由や万が一に備えて個人賠償責任保険への加入が必要なことについて解説します。
第一章 自転車事故で賠償金9,500万円
2013年7月、神戸地方裁判所は当時11歳の小学校5年生が起こした自転車事故に対し被害者に約9,500万円の損害賠償金の支払いを母親に命じました。どのような事故で、なぜここまでの高額な賠償額になったのか紹介します。
1.事故の概要
事故は2008年9月22日午後6時50分ごろ、神戸市の住宅街の坂道で、当時11歳の少年が自転車で坂道を時速20~30キロで下っていたとき起きました。少年は、自転車のライトを点灯していましたが、知人と散歩中の当時62歳の女性に気づかず正面から衝突。女性はその衝突の衝撃で転倒し頭を強打。女性は幸いにも一命を取り留めましたが、意識は戻らず寝たきりの状態になりました。
2.損害賠償額が9,500万円になった理由
裁判で子どもの監督責任を問われて訴えられた少年の母親は、子供は適切にハンドルを操作し、また自らもライトの点灯やヘルメットの着用など安全な走行をするように指導するなどして監督責任を果たしていたと主張。そして被害者にも衝突を回避すべき過失があったとして、過失相殺による損害賠償額の減額を主張しました。
しかし、判決で裁判所は、少年が時速20~30キロで走行し、前方を注意していなかったことが事故の原因と認定。事故時に少年がヘルメットを未着用だったことなどの理由から、母親の指導や注意が功を奏しておらず、監督義務を果たしていないとして、母親に9,500万円の支払いを命じました。以下の内訳のとおり、被害女性の意識が戻らぬままとなっていることで、将来の介護費用と慰謝料などが高額となった結果、自転車事故としては驚くほどの高額な賠償金となりました。
9,500万円の内訳
・治療費その他 | 約440万円 |
・慰謝料 | 300万円 |
・休業補償(専業主婦業として) | 約145万円 |
・後遺症 | 約9,000万円 |
内訳 | |
・後遺障害慰謝料 | (2,800万円) |
・後遺障害逸失利益 | (約2,200万円) |
・将来の介護費用 | (約4,000万円) |
合計 | 約9,500万円 |
3.親が子どもの事故の補償をしなければならない理由
民法は712条で、「未成年者は、他人に損害を加えたとき、自己の行為の責任を認識できない(責任能力がない)ときは、損害に対する賠償責任はない」と定めています。責任能力がない未成年者とは状況によって多少変動しますが、おおむね12歳未満と考えられています。一方、714条で「責任能力のない未成年者の親権者は、未成年者が危険な行為をしないように指導監督する義務があり、これを怠ると、監督義務を怠ったとして親権者には賠償責任が発生する」と定めています。なお、いくら親権者が子どもに注意をしても裁判になった場合、客観的に注意していた事実を証明できなければ監督責任を果たしていたことを裁判所に認めてもらえません。日頃から交通安全や危険な行為をしないように注意していた事実をメールやLINEなどのSNSで何度も記録などしておくと認められる可能性があります。
4.高額な賠償金でも被害者は全額受け取れる保証がない
裁判で高額な判決が出ても加害者に支払能力がないと賠償金は実質的に全額が支払われません。加害者が高額な賠償金でも支払える保険に加入していないかぎり、一般的に1億円にもなるような高額な賠償金の支払いを満額受け取ることは実質的に不可能です。また、加害者が自己破産を申請して認められれば、通常「悪意をもった行為で発生した損害賠償」および「重過失で生じた損害賠償」でなければ損害賠償する必要がなくなります。今回の事故は、悪意を持って起こしたとは考えにくく、子どもに前方不注意という大きな過失はありますが、重過失までではないと判断される可能性があります。その場合、加害者は自己破産という一定の社会生活上の制約を受ける代わりに賠償金の支払いを免除されます。
そのため、加害者、被害者の双方とも保険に加入して万が一に備えることが重要です。なお、上記の神戸の事故では、被害者は幸いにも保険に加入しており、保険会社から6,000万円が支払われています。加害者は、被害者に対し約3,500万円、保険会社へ6,000万円を支払わねばなりません。
第二章 神奈川県の自転車交通事故多発地域
国土交通省は2015年3月の報告書で「交通事故死者数に占める自転車乗用中の死者数の割合が増加」「全交通事故件数および自転車関連事故件数が減少するなか、自転車対歩行者の事故が過去10年間で1.3倍に増加」「年齢層別に見ると、中高生の自転車関連事故が多く発生し、利用目的別の死傷者は通勤通学が多い状況」だとして、安全な自転車通行空間を早期にネットワーク化させるなどの対策の必要性を報告しています。
神奈川県も同様な危機意識から2018年5月に「自転車の関係する交通事故は2002年をピークに減少傾向にあるものの、2017年は前年より増加し、県内の交通事故に占める割合は高くなっている」として、自転車の交通違反や歩道上での危険な運転など、自転車利用者のルールの遵守やマナーの向上を課題にあげています。全事故の5件に約1件が自転車の絡んだ事故と意外に多い結果が現れています。亡くなった人は、2017年度は21名です。
そこで、神奈川県交通安全対策協議会は、2017年中の自転車交通事故の割合(構成率)が県内平均より3ポイント以上高いか、自転車事故の死者数が2人以上のいずれかに該当する下記14地域を「自転車交通事故多発地域」に指定し、この地域における自転車の交通安全対策を重点的に推進すると発表しました。
1.指定14地域
*カッコ内は全事故に対する自転車事故の構成比。県全体の平均は22.9%
- 横浜市鶴見区(27.1%)
- 川崎市川崎区(39.5%)、幸区(33.7%)、中原区(33.7%)、多摩区(32.2%)、高津区(29.0%)
- 相模原市南区(34.2%)、中央区(33.0%)
- 茅ヶ崎市(33.9%)
- 藤沢市(29.1%)
- 大和市(28.2%)
- 平塚市(26.8%)
- 寒川町(32.8%)
- 大磯町(29.9%)
2.交通安全対策協議会による対策
自転車の安全利用を周知するため、「自転車保険制度」に関するチラシ10,000枚を各市区町村へ配布し、広報啓発活動の支援を実施しています。
第三章 全国共済加入者限定のお得な保険
兵庫県では、上記の事故を受けて自転車保険の加入を自治体として義務化しました。他の自治体も「被害者保護」と「加害者の経済的負担の軽減」のために自動車保険のように加入を義務化の方向に動いています。神奈川県は、現在はまだ自転車保険の義務化はされていません。しかし、自転車損害賠償保険への加入の義務化を柱とする自転車条例の検討委員会が2018年8月に開催され、年度内の制定(2019年3月)を目指すことが明らかになっています。事故はいつ起きるかわからないので1日も早く加入することをおすすめします。全国共済加入者限定のお得な保険では、年額は保険料1,680円(1カ月あたり140円)で、保険金額の限度額は1億円から増額されて安心の3億円です。
2018年4月現在で加入を義務化、および加入を努力義務としている自治体は以下のとおりです。
1.加入が義務化の自治体
- 神奈川県相模原市
- 埼玉県
- 愛知県名古屋市
- 滋賀県
- 京都府
- 兵庫県
- 鹿児島県
- 石川県金沢市
- 宮城県仙台市(2019年4月1日から)
2.加入が努力義務の自治体
- 千葉県
- 群馬県
- 東京都
- 鳥取県
- 徳島県
- 香川県
- 愛媛県
- 福岡県
- 熊本県
まとめ
近年、自転車事故による高額な損害賠償金の支払いを命じる判決が増加しています。また、高齢者が増加し、ちょっとした接触事故でも大きな事故になる可能性があります。万が一に備えて保険に加入しておくことが必要です。個人賠償責任保険の保険料は低く小さな負担で大きな安心を得られます。
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