分かりにくい健康診断表の見方と健診の必要性

会社に勤務している人は必ず受診している健康診断について必要性、目的、診断結果の見方、および健康診断と同様の目的で行われる人間ドックとの違いについて解説します。

第一章 なぜ健康診断が必要なのか?

1.健康診断の必要性

病気には、インフルエンザ、胃痛、頭痛などのように病気になると体調の変化がすぐに症状として現れる病気と、すでに病気の状態になっている、あるいは病気が進行しているけれども体調の変化がほとんどなく、病気であることに気がつかないときがあります。このような病気が、症状がはっきりと現れたときに病院に行って簡単に治ればよいのですが、放置すると死に至るような怖い病気がたくさんあります。死に至らなくても完治するまでには長い期間がかかったり、治療費がかさんだりして個人的にも社会的にも大きな損失が生じます。

健康診断は、このようなムダをなくし、健康で明るい社会を築くために病気の早期発見と病気の予防のために実施されます。なお、自分の健康は自分で守る、あるいは健康診断を受けなくて病気になっても自己責任だから健康診断は必要ないという考えがあるとしたら、それは間違いです。病気になったときの医療費には税金や多くの人が支払った保険料などが含まれているからです。

2.健康診断の目的と重要性

健康診断の目的は、病気の「一次予防」と「二次予防」です。

一次予防とは、病気になる前の健康者に対して、病気の原因と思われるものの除去や回避に努め、健康の増進を図って病気の発生を防ぐなどの対策を行うことです。健康診断の結果から病気になる可能性のある生活習慣の問題点を知り、悪い生活習慣を改善して、病気を予防するきっかけにできます。

二次予防とは、体調の変化など症状が現れていない病気の人をできるだけ早期発見・早期治療をすることで病気が進行して重篤な状態にならないようにすることです。早期発見・早期治療により、手術などの体に負担のかかる治療を回避でき、完治までの期間の短縮、治療費の軽減ができます。

近年、食生活の変化や運動不足によって、糖尿病や高脂血症、高血圧などの生活習慣病が増加しています。これらの病気は、インフルエンザ、胃痛、頭痛などのように自覚症状がなく静かに深く進行して、ある日突然に症状が現れます。この段階からの治療では、簡単に完治せず治療に長い時間と多額の医療費がかかる可能性があります。また、症状の程度によって慢性化して定期的な通院治療や食事の制限が必要になって生活の質(QOL)が悪化します。健康診断は、自覚症状がない生活習慣病などをチェックできて、予防できるのでとても重要です。病気の治療の基本は、早期発見・早期治療です。なお、会社に勤務していると健康診断は法律で受診が義務付けられています。そうでない人も健康診断は必ず受けるようにしてください。

第二章 分かりにくい健康診断表の見方について

1.診断項目

会社勤務の人が受けなくてはならない健康診断は、労働安全衛生法で以下の項目を実施しなければならないと定められています。実施される診断項目のうち、34歳以下が受ける定期健診、35歳以上が受ける生活習慣病健診、40歳以上が受ける特定健診で診断項目は異なります。下記の定期健康診断項目、検査や評価の方法などは法律の改正で変更されることがあります。

  • 既往歴と業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
  • 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査*
  • 血圧の測定
  • 貧血検査(血色素量、赤血球数)
  • 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
  • 血中脂質検査(LDL・HDLコレステロール、TG)
  • 血糖検査
  • 尿検査(尿中の糖およびタンパクの有無の検査)
  • 心電図検査

*雇い入れ時健康診断においては胸部エックス線検査のみ。

なお、医師が必要でないと認めるときには上記の診断項目のうち、以下の項目は省略されることがあります。

  • 身長
  • 腹囲
  • 胸部エックス線検査
  • 喀痰検査
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 心電図検査

2.主な診断項目の数値の見方

健康診断の結果を示した用紙には何を測定したかとその数値が正常か要注意か、あるいは異常かが示されています。また、測定結果からどこが悪くて、そのような病気が疑われるかも通常ちゃんと記載されています。しっかり読んで医師の指導に従うことが重要です。ここでは主な診断項目の数値の見方を紹介します。

2-1 身体計測

腹囲の計測で、男性85cm以上、女性90cm以上だとメタボリックシンドロームの可能性があります。ただし、メタボリックシンドロームは、腹囲に加えて「脂質異常」「高血圧」「高血糖」のうち2つ以上に所定の数値基準があった場合です。腹囲の計測のみが上記の数値であったときはメタボリックシンドロームではありません。

視力の計測で裸眼、もしくはメガネやコンタクトで矯正した状態で1.0以上の数値があることが適正です。視力が0.7未満のときは、仕事内容によってはメガネなどによる矯正を指示される可能性があります。

聴力の計測で、40dB~50dB以上の音が聞こえないときは軽度の難聴の疑いがあります。

2-2 血圧測定

収縮期血圧(最高血圧)が150mmHg~160mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が95mmHg~100mmHgを超えると高血圧と判断されます。なお、血圧は図ったときの体の状態で数値が変動します。健康診断のときの数値だけでなく自宅で血圧を何度か測定して高血圧かどうか確認しましょう。

2-3 尿検査

糖を示す値が2+以上であれば糖尿病、あるいは腎臓の病気の疑いがあります。蛋白(たんぱく)を示す値が2+以上であれば腎臓の病気の疑いがあります。潜血を示す値が2+であれば腎臓や尿管、膀胱(ぼうこう)などの病気の疑いがあります。ただし、疲労などで体調が悪いと一時的に潜血が出ていることが考えられることから、診断の確定には複数回の検査が必要です。

2-4 血液検査

・総蛋白(TP)
数値が9.1以上の場合は、多発性骨髄腫、慢性炎症などの疑いあります。数値が5.9以下の場合は、栄養障害、ネフローゼ症候群、がんなどの疑いがあります。

・アルブミン
数値が3.5以下の場合は、肝臓障害、栄養不足、ネフローゼ症候群などの疑いがあります。

・AST(GOT)と ALT(GPT)
ともに数値が51以上の場合は、肝臓の病気の疑いがあります。AST(GOT)のみが51以上であれば、心筋梗塞、筋肉疾患などの疑いがあります。

・γ-GTP
数値が101以上の場合は、肝臓の病気の疑いがあります。

・クレアチニン(Cr)
数値が男性1.30以上、女性1.00以上の場合、腎臓に病気の疑いがあります。

・尿酸(UA)
数値が9.0以上の場合、高尿酸血症(痛風)の疑いがあります。

・総コレステロール(TC)
数値が260以上の場合、動脈硬化、脂質代謝異常、甲状腺機能低下症、家族性高脂質異常症などの疑いがあります。また、放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞などを発症する可能性が高くなります。なお、数値が139以下の場合は、栄養吸収障害、低βリポ蛋白血症、肝硬変などの疑いがあります。

・HDL コレステロール(善玉コレステロール)
数値が29以下の場合、脂質代謝異常、動脈硬化の疑いがあります。

・LDL コレステロール(悪玉コレステロール)
数値が180以上の場合、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞の危険性が高くなります。

・中性脂肪(TG)(トリグリセリド)
数値が400以上の場合、動脈硬化を進行させます。数値が29以下の場合、低栄養などの疑いがあります。

・血糖値(FPG)
数値が126以上の場合、糖尿病、すい臓がん、ホルモン異常の疑いがあります。

・HbA1c
数値が6.1以上の場合、糖尿病のコントロール状態がうまくできていないことが分かります。また、空腹時血糖(FPG)が126mg/dLかつHbA1c(JDS)が6.1%以上(NGSPの場合は6.5%以上)の場合、糖尿病と判断されます。

・赤血球(RBC)
数値が男性600以上、女性550以上の場合、多血症の疑いがあります。数値が男性359以下、女性329以下の場合、貧血の疑いがあります。

・血色素(Hb)(ヘモグロビン)
数値が男性18.0以上、女性16.0以上の場合、体に何らかの異常が起きている可能性があります。数値が男性11.9以下、女性10.9以下の場合、貧血の疑いがあります。

・ヘマトクリット(Ht)
数値が男性51.0以上、女性48.0以上の場合、多血症、脱水などの疑いがあります。数値が男性35.3以下、女性32.3以下の場合、貧血の疑いがあります。

・MCV、MCH、MCHC
数値が9.0以上の場合、ビタミン B12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血、過剰飲酒の疑いがあります。数値が2.5以下の場合、貧血が疑われます。

・白血球(WBC)
数値が9.0以上の場合、細菌感染症などの炎症、または腫瘍が存在する疑いがあります。たばこを吸う人は高い数値が出ます。数値が2.5以下の場合、ウィルス感染症、薬物アレルギー、再生不良性貧血などの疑いがあります。

・血小板数(PLT)
数値が40.0以上の場合、血小板増多症、鉄欠乏性貧血などの疑いがあります。数値が9.9以下の場合、再生不良性貧血、急性白血病、肝硬変、膠原(こうげん)病などの疑いがあります。

第三章 健康診断と人間ドックの違いについて

1.健康診断と人間ドックの違い

健康診断も人間ドックも病気の早期発見・早期治療を目的としている点では同じです。健康診断と人間ドックの違いの主な点は以下の4つです。

1-1 検査項目・範囲の違い

健康診断の検査項目は10数項目ですが、人間ドックは通常50項目、多い場合は100項目程度行われます。健康診断では、例えばがん検査は行われませんが、人間ドックでは行われます。また、人間ドックは、同じ部位を異なる検査方法で検査したり、いろいろな検査を組み合わせたりできます。さらに同じ検査項目でも、低価格にしてできるだけ多くの人に受診してもらえることを目的とする医療機関や、逆に高価格にして多くの専門医をそろえて、より精密・正確な診断を目的とする医療機関など、予算、受けたい検査内容など目的に応じた人間ドックを実施している医療機関を選べます。

1-2 費用と検査時間の違い

人間ドックは検査範囲が広いことから、検査費用が多くかかり、検査時間も1日から数日かけて行われます。

1-3 義務か任意の受診かの違い

健康診断は、会社に勤務する人は労働安全衛生法に基づいて受診が義務付けられていますが、人間ドックの受診は任意です。なお、自営業者や主婦の健康診断は任意です。

1-4 検査結果が分かるまでの時間

健康診断は、検査結果が後日送付されてくるのが一般的です。人間ドックは、医師から当日中、または検査がすべて終了したら、検査結果について説明を受けられます。また、検査だけでなく、専門スタッフによる保健指導(生活改善や治療のアドバイス)も行われます。さらに、さらなる精密検査が必要なとされ、再診を受けない方も多くいらっしゃいますが、それに対して受診後にフォローを行う医療機関もあります。

第四章 まとめ

健康診断の必要性、目的、診断結果の数値の見方・意味、および健康診断と人間ドックの違いについて紹介しました。病気はまず予防、そして次に早期発見・早期治療が重要です。病気の予防、早期発見・早期治療に健康診断の結果を活用するとともに、健康診断の結果がよくても完全に病気は予防できないこと、および病気を完全に見つけられないため、万が一に備えて共済の保険に加入することをおすすめします。

全国共済への加入をお考えの方は、まずは資料請求からいかがでしょうか?
こちらから全国共済への資料請求ができますので、ぜひお役立てください。