「食事中にうまく飲み込めない…」は嚥下障害かも?

高齢になると食べ物が食べづらくなる嚥下(えんげ)障害が起きやすくなります。嚥下障害になると命にかかわる病気の誤嚥(ごえん)性肺炎になるリスクがあり、高齢者は注意が必要です。嚥下障害の概要、原因や予防法、治療法について紹介します。

第一章 「嚥下障害」とは?

1.嚥下障害とは?

嚥下障害とは、食べることや飲み込むことがうまくできなくなる障害のことです。具体的には、食べるとむせる、食べ物を飲み込めない、そしてそれらによって食事に時間がかかる、食べるのに疲れるなどの症状が表れます。また、食べ物が口からこぼれる、口に残る、食べ物がつかえる、食後に痰(たん)が出るなども嚥下障害の症状です。嚥下障害になると食事がうまくできないため、人間として生きる喜びの一つが失われ、生活の質が低下します。また、それだけでなく低栄養や脱水になったり、飲み込んだものが気管に入って窒息状態になったりし、命を脅かす病気の誤嚥性肺炎になることもあります。

2.嚥下障害が引き起こす誤嚥性肺炎とは?

誤嚥性肺炎は、高齢者の場合、死亡原因として高い割合を占める病気です。人の体は、食べ物を食べて飲み込むとき、肺につながる気管には食べ物が入らないようにできています。しかし、嚥下障害の状態になると、この機能がうまく働かず、食べ物や唾液、あるいは胃からの逆流物などが気管に入ってしまうことがあります。気管に入った食べ物や唾液、逆流物に細菌が含まれていると、それらによって肺が炎症を起こし激しくせきこんだり、高熱が出たりする症状が表れます。これが誤嚥性肺炎です。日本人の死因として肺炎は、がん、心疾患、老衰、脳血管疾患とともに多い病気です。厚生労働省のデータによると肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者で、そのうち7割以上が誤嚥性肺炎です。このように肺炎は怖い病気で、公益財団法人長寿科学振興財団のデータによると、肺炎で亡くなる人の約9割が75歳以上の高齢者です。

肺炎の症状は、「高熱」「激しいせき」「呼吸の息苦しさ」「肺の雑音」「黄色く濃い痰」などです。しかし、誤嚥性肺炎の症状では、こうした症状がはっきり見られないことがあります。特に高齢者の場合は、肺炎の病状が進んでも症状が表にあまり出ません。そのため重症化してから初めて気が付くということが多く起こります。肺炎の症状が強く表れていなくても、「唾液や食べ物をなかなか飲み込めない」「食後に疲労している」などのときは誤嚥性肺炎を疑い、早めに医師に診察してもらうことが大切です。

第二章 「嚥下障害」はなぜ起こる?

嚥下障害の原因は、大きくわけると「器質的原因(形態異常)」「機能的原因」「心理的原因」の3つです。

1.器質的原因(形態異常)

食べた食べ物を胃へうまく運べないような構造上の問題が起こるのが器質的原因(形態異常)です。原因として多いのは、口内炎や喉頭がんによる腫瘍の手術や炎症などによって後天的に器官に生じた形態異常です。唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)などの先天的な奇形が原因となることもあります。

2.機能的原因

器官そのものには問題がなくても、それらを動かす筋肉や神経に問題があって嚥下障害が起きるのが機能的原因です。これは、加齢による筋力の低下、筋肉のマヒなどを起こす「脳血管疾患」や「パーキンソン病」などの「神経筋疾患」などで起こります。また、薬剤の影響で器官の働きが低下して起こることもあります。

3.心理的原因

うつ病などの心因性の疾患で嚥下障害を引き起こすのが心理的原因です。

第三章 「嚥下障害」の予防や治療法

1.嚥下障害の予防法

嚥下障害は手術などで治療できますが、ほとんどの場合、予防のための方法を毎日行うことで改善できます。予防法は食事の前に行うと効果的です。

1-1 腹式呼吸法の実施

腹式呼吸による深い呼吸で呼吸機能を高めると、間違って食べ物が肺へ入ってしまったとき、排出しやすくなります。腹式呼吸は、ゆっくり息を吐き出し、最後におなかをへこませるまで息を吐き出します。そして、ゆっくりと息をおなかまで入れる感じで吸うことを繰り返します。嚥下障害が起きるのは、食べ始めのときにもっとも起こりやすいので、食事の前に腹式呼吸をしてから落ち着いて食べるようにすると効果的です。

1-2 発音トレーニングの実施

「パピプペポ」「ラリルレロ」「タチツテト」「カキクケコ」「マミムメモ」とパ行、ラ行、タ行、カ行、マ行の5音を繰り返し発音します。これらを発音すると食べ物を飲み込むときに働く器官(口、舌、のどなど)を鍛えられます。

1-3 首や口・舌のトレーニングの実施

首、口、舌の周辺の緊張をとり、リラックスできると、飲み込むときの筋肉運動をスムーズにできて、嚥下障害が起こりにくくなります。具体的には首のトレーニングは、肩の力を抜き、首を前後・左右にゆっくり動かして首筋をしっかり伸ばします。口のトレーニングは、ほおをふくらませたり、へこませたりを繰り返します。舌のトレーニングは、舌を思い切り前に出したり、引っ込めたりします。トレーニングは毎日、無理しない程度の回数を行います。

2.日常生活で注意すること

嚥下障害を防ぐには食事の仕方や衛生面などについて日常的に注意します。

2-1 食事時の注意点

正しい姿勢でイスに座り、テレビや新聞を見ながらの食事やゲームをしながらの食事など「ながら食事」をやめます。また、食べ物は少量ずつ口に入れ、急がないでゆっくり、よくかんで食べます。食べ物は口にあるものを飲み込んでから、次の食べ物を口に入れましょう。高齢者の場合、パサパサした食材やかみ切りにくい硬い食材ほど飲み込みにくいので、パサつく食材には片くり粉やゼリーでとろみを付けましょう。硬い食材はあらかじめ小さく切って食べやすくしましょう。また、汁気の多いものはむせやすいので、汁気の多いものは少量ずつ食べられるように工夫します。

食べるときに、体に力が入っていると嚥下に関わる器官が正常に働きにくくなるため、誤嚥しやすくなります。深呼吸したり、肩や首を回したり、頸部(けいぶ)や肩を中心にストレッチしたりなど、上半身をリラックスさせて体の力を抜いて食べましょう。

2-2 口内衛生の注意点

嚥下障害が起こると、口に食べカスなどが残りやすくなります。放置しておくと、口内に細菌が繁殖して誤嚥によって細菌が肺に入ると重症化する誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。食後には歯磨きをし、いつも口の中をきれいにしておくことが必要です。

3.嚥下障害の治療法

嚥下障害の治療は、歯科や耳鼻咽喉科で嚥下障害専門外来を設けている医療機関や、摂食・嚥下障害専門のリハビリテーション科のある医療機関を受診しましょう。治療には嚥下機能を改善する方法と、手術で嚥下機能を取り戻す方法があります。

3-1 のどのアイスマッサージ

凍らせた綿棒に水をつけ、口腔内やのど を刺激して「嚥下反射」を誘発する治療法です。嚥下反射とは、食べ物を飲み込むときに反射的に肺へ入らないように気管にふたをする働きのことです。

3-2 嚥下反射促進のためのマッサージ

あごから下をマッサージして嚥下に関わる筋肉を刺激し、嚥下運動を促すマッサージによる治療法です。

3-3 バルーン法

バルーンカテーテル(先端付近にバルーンが付いたカテーテル)を使用して、のど や食道を広げる訓練をする治療法です。のどに嚥下の障害物があるときに用いられます。

3-4 誤嚥防止の訓練

呼吸に使う筋力をアップして、痰や食べ物が気管に入ったときに強いせきで排出できるようにします。訓練法には、実際に食べ物を食べながら行う方法、嚥下を意識的に行う方法などがあります。

3-5 手術

手術は大きくわけて「嚥下機能改善手術」と「誤嚥防止術」の二つがあり、重度の嚥下障害に対して行われます。手術後も誤嚥防止のための予防法の継続が必要です。

第四章 まとめ

嚥下障害は命を脅かす病気(誤嚥性肺炎)を招く恐れがあります。特に高齢者は注意が必要です。若いときから適切な予防策を行い、高齢になって嚥下障害にならないようにしましょう。また、嚥下障害を含め、病気やケガは注意していても避けることは不可能です。万が一の病気やケガへの備えとして全国共済への加入をおすすめします。


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